1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第4回目の特集は、カープ歴代助っ人外国人のインタビューセレクション。

 海を渡ってカープにやってきた助っ人たちは、その活躍だけでなく、ユニークなキャラクターでも多くのカープファンに愛された。ここでは懐かしい外国人選手を中心に、彼らの “広島愛”を改めて振り返る。

 2008年に入団すると、安定感のある投球で勝利の方程式の一角を担ったマイク・シュルツ。『22試合連続無失点』や『1球セーブ』など数々の逸話を残した助っ人右腕が、自身の野球人生を振り返った当時のインタビューをお送りする。(全2回/第2回)(『広島アスリートマガジン2010年6月号』掲載記事を再編集)

2009年、安定感のあるピッチングで広島の勝利の方程式の一角を担ったシュルツ

◆苦しい時間があったからこそ、今は一日一日を無駄にしない

— シュルツ投手の人間性にも迫りたいのですが、どちらかというと謎めいた印象も受けています。ご自身ではどんな性格の人間だと思っていますか?

「球場やフィールド以外では、家族と過ごす時間を一番大切にしています。私には妻と子どもがいますし、彼らと過ごす時間が最も大事です。球場では、野球の試合は英語で『game』と言いますが、『game』である以上楽しむことを一番に心掛けています。ナイターの試合では昼の1時くらいから球場に入って、試合終了後の10時や11時頃までおよそ9時間か10時間は球場で過ごすので、真剣になるところは真剣になる、楽しむところはしっかり楽しむようにと、切り替えるようにしています。友だちやチームメイトのみんなと楽しい時間を過ごしてなるべくリラックスするのは必要なことです。野球選手である以上、職業なので真剣にならなければいけませんが、シーズンは長いので毎日10時間も真剣にやっていたら疲れてしまいますからね。休日は家族と一緒に過ごして、広島の街を歩き回っていますよ。ファンの方から『シュルツだ』と声をかけられることもあるんですが、それはこちらもうれしいし、コミュニケーションを取りたいですね(笑)」

— これまで長く野球をされてきたと思いますが、最も大きかった経験は何ですか?

「一番苦しかった思い出になるのですが、肩のケガをして手術をした時期はつらかったです。痛めたのは2000年でちょうどドラフトにかかってプロに入った年だったんですが、球を投げられるようになるまで3年くらいかかりましたね。その間を棒に振ってしまったのですが、プレーしたいけどできないジレンマがあって、友だちやチームメイトが野球をやっているのを見ながらも自分はできないのは苦しい時間でした。『もう野球をやめてしまおうかな』とも思いましたが、やっぱり野球を愛していますし、私が一番嫌いなのはあきらめるということ。『とにかくもう1年頑張ってみよう』と思いながら、苦しいリハビリを何とか乗り越えて今に至っています」

— その経験は今に生きていますか?

「苦しい時間があったからこそ、今は一日一日を無駄にしないという気持ちを持っていますし、新しい日を迎えればまた野球ができる喜びをいつも感じています。今、カープでプレーできているのも、あの経験があったからこそだと思っています」

— 安定した投球を続けており、チームに不可欠な存在になっています。ご自身としても日本に来たことは正解だったのではないですか?

「自分としても日本に来られたことをとても喜んでいますし、こういうチャンスをもらえたことに感謝しています。日本の野球をとても愛していますし、できる限り日本にいたいと思っています。家族も日本での暮らしをすごく気に入っていますし、自分の気持ちとしては5年、できれば10年以上、自分の野球人生が終わるまで日本でプレーできればいいと思っています」

— 日本語は覚えましたか?

「(日本語で)チョットネ(笑)。話すよりは理解する方が得意ですね。もう3年も日本にいるので、街に出てもほとんどのことは自分一人でできます。生活には支障はないのですが、まだ日本語は勉強しているところです」

— では、シュルツ投手の活躍に期待しているファンにメッセージをお願いします。

「本当にファンの方たちには感謝しています。自分たちが苦しいときでもサポートしようという気持ちが伝わってきますし、球場に足を運んで声援を送ってくれています。自分自身にとっても、街を歩いていたら声をかけてくれて、『昨晩の投球はよかったよ』と言ってもらえる。そういうのは一選手として本当にうれしく、勇気づけられることです。ファンの方を大切にしたいですし、感謝の気持ちを伝えたいです」

■マイク・シュルツ
1979年11月28日、アメリカ出身
右投右打、201cm100kg
ロヨラ・メリーマウント大ーダイヤモンドバックスー広島(2008〜2011)ーオリックス