2021年プロ野球も終盤に差し掛かってきた。9月16日現在、カープは43勝57敗10分でリーグ最下位。チーム打率は両リーグトップの.260を記録しているものの、得点はリーグ5位の414と、チーム打率が反映されていない数字が残っている。

 また、ここまでの盗塁数はリーグ5位の51個。カープ野球といえば、“伝統の機動力野球”というイメージも強い。今季は足を使った攻撃力の復活が期待されていただけに、“カープらしい攻撃”が展開しているとは言い難い。

 カープ黄金期と呼ばれた1980年代、“赤ヘル軍団”は古葉竹識監督の下で高橋慶彦、山崎隆造らが塁上を駆け巡り、幾度も得点機会をつくり続けてきた。その時代に三度の盗塁王に輝いた高橋慶彦氏が、以前本誌に語っていた“自身が考える機動力野球”を、改めて振り返っていく。

9月16日現在、チーム盗塁数51はリーグ5位。後半戦1番に定着した野間峻祥はチームトップの9盗塁を記録している。

◆いかに効率よく点を取るか?

 盗塁数が多いに越したことはありませんが『長打が出ないなら、走ろう』では得るものはありません。走者を返す打者がしっかりしているからこそ、盗塁が活きてくるのです。盗塁数が多くても、得点に繋がらないと全く意味がありません。

 現役時代、私はトップバッターを任されることが多かったですが、無死三塁、1死三塁という場面を作り出すことを念頭に置き『どうやったらチームが得点を奪えるか』を考えていました。その状況を作り出すことで、中軸のチャンスに強い打者が長打はもちろん、ゴロ、犠牲フライでも打ってくれれば簡単に得点が取れます。

 走者にしても打者にしても、置かれた状況を考え『いかに効率よく点を取るか』を頭に置いてプレーすることが大切になってきます。現役時代の私や山崎隆造、正田耕三は、無死二塁の場面で打席を迎えれば高い確立で三塁前へセーフティバントを試みていたと思います。

 決めていれば無死一、三塁、犠打で決まれば1死三塁といずれも得点を奪う確立が上がる訳です。当時の古葉監督は常に『よく考えろ』と言っていました。「次の打者は誰なのか」、「ここで打つべきなのか」、「送るべきなのか」、「次の打者はどんな調子か」など、あらゆる状況判断を考えさせられました。その方法論の中で何を選択するか? それが大事になりますし、その行動こそが『機動力野球を理解している』ということに繋がっていくと思います。