目指したのは“スキのない野球”

 監督として目指したのは“スキのない野球”だった。チームのメンバーを眺めると、ホームランを量産できる選手が何人もいるわけじゃない。10勝できるピッチャーが3人も4人もいるわけじゃない。

 今いる選手たちをベースにどう勝っていくかを考えたとき、辿り着いたのは「スキのない野球をする」ということだった。スキのない野球とは、言い方を変えればミスをしない野球であり、しっかり考えて野球をやるということである。

 ただ僕にとってミスというのは、エラーだけを指すのではない。僕にとってのミスとはボーンヘッドであり、当たり前のことを当たり前にできないこと。それを極力減らしていくことが、まずはチーム力のアップに繫がると考えたのだ。

 たとえばエラーをした。相手と勝負しようとして四球を出した。エラーも四球も褒められたものではないが、それが起こり得るのが野球というスポーツだ。それはミスではあるが、本当のミスというのはもっと大きな枠で考えるべきだと僕は思う。

 たとえば振り逃げ。空振り三振したとしても、そこであきらめずにファーストに走っていればセーフになる可能性がある。もしくはボテボテの内野ゴロを打ったとき、最後まで懸命に走っていれば、送球が逸れたり、バウンドがイレギュラーしてファーストに間に合う可能性もある。