FA権を保持していた選手が続々と残留を決めるなど、来シーズンに向けて戦力が整いつつあるカープ。来季は、球団史上初のリーグ3連覇を成し遂げた頃のように、選手とベンチが一体となった“カープ野球”の復活が欠かせない。

 ここでは、カープOBの笘篠賢治氏に、ヤクルトとオリックスの日本シリーズにおける両ベンチの采配について話を聞いた。

ベンチワークを含めたカープらしい野球の復活がV奪回の鍵となる。

◆吉田正尚の敬遠に迷いがなかったベンチワーク

 11月23日の日本シリーズ第3戦。オリックス、ヤクルトの両ベンチの采配も見応えがありました。

 なかでもポイントとなったのは、9回表のオリックスの攻撃。2死三塁の場面です。ここでヤクルトベンチは、三番の吉田正尚を敬遠で歩かせて、四番の杉本裕太郎との勝負を選びました。難しいシチュエーションだったと思いますが、ヤクルトベンチの決断は早く、そこに迷いは感じませんでした。

 吉田を歩かせるということは、逆転のランナーを出すことになるので、少なからず迷いはあったはずです。ただ、そこで考える時間をつくってしまったら、オリックスに流れが渡っていたかもしれません。監督をはじめ、首脳陣が、良いことも悪いこともしっかりと想定して試合に入っているからこそ、腹をくくって勝負ができていますし、“先読みの力”も生まれるのだと思います。

 先を読みながらの戦いは短期決戦ならではの醍醐味です。オリックスの中嶋監督は眼力がありますし、ヤクルトの高津監督には度胸があります。

 また、両監督ともに、大胆でありつつも、“選手に疑問を抱かせない采配”をしていると感じています。選手とベンチの考え、そこが一つになっている雰囲気が、見ているこちらにも伝わってきます。

 ここぞのタイミングでベテラン選手を使い、ベンチと球場の士気をあげたりするなど、打った打たないという結果以外でも、両チームともに選手の動かし方が上手です。

 ペナントレースが終了し、秋季練習、ファン感謝デーも終えて、一息ついているタイミングだと思いますが、カープの選手たちは、今回の日本シリーズを見て、いろいろなことを勉強ほしいですね。