【写真】2019年のカープを象徴するのが、田中広輔のフルイニング連続出場記録のストップだ

レギュラー返り咲きへ猛アピール

 チーム内での田中の存在感をさらにクローズアップさせたのが、翌18年シーズンのゴールデン・グラブ賞の初受賞だ。常勝カープの強固なセンターラインを支える一角として、同賞の常連だった同学年のセカンド・菊池涼介、センター・丸佳浩と共にタナキクマルトリオが同時受賞。走攻守、いずれの面でも他チームを圧倒したカープが、リーグ3連覇という球団初の偉業を成し遂げたのも当然と言えば当然だったのかもしれない。

 3年連続で全試合フル出場を果たしリーグ3連覇に貢献。そんな田中に異変が生じたのが、プロ6年目となる昨シーズンだ。春先から打率が伸び悩むなど打撃不振が続き、規定打席到達者ではリーグ下位を推移した。持ち味の出塁率も低迷し、田中につられるようにチーム成績も急降下。5月こそ球団史上最多の月間20勝をマークしたが、交流戦突入と同時に再びチーム状態は悪化した。

 そして迎えた6月20日のロッテ戦。復調の兆しが見えないこともあり、ついに首脳陣が田中のスタメン落ちを決断した。15年4月1日から始まったフルイニング連続出場記録は、歴代6位の635試合でストップ。後に右膝の故障が判明したとはいえ、リーグ3連覇の立役者の離脱はショッキングな出来事としてファンの脳裏にインプットされた。レギュラーに定着してから「ずっとリーダーとしての意識はあります」と公言していた田中の離脱は、チーム内にも大きな影を落とし、結果的に4連覇を逸する一つの要因となってしまった。

 しかし、早期に右膝半月板の部分切除手術に踏み切ったのが功を奏した。リハビリによる出遅れも考えられるなか、田中は會澤翼から選手会長のバトンを受けた。ニューリーダーとして今季春季キャンプでは初日から他の選手と同じメニューを消化し猛アピール。現時点では1番ショートでのレギュラー返り咲きが濃厚と見られている。

「調整という面で考えると難しいことではありますけど、『決められたところで、しっかりとしたパフォーマンスを見せる』というのはプロとして当たり前のことだと思っていますし、やらなきゃいけないことですからね。調整が難しいといっている場合ではないと思います」

 5月11日には日本野球機構がプロ野球の開幕日を、最短で6月19日に設定する方針を指し示した。新たに選手会長に就任した田中が、真のリーダーとしてグラウンド内外でⅤ奪回を目指すチームを牽引していく。

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