カープの鈴木誠也(27)がポスティングシステムでのメジャー挑戦を表明した。6年連続打率3割・25本以上を記録したNPB屈指のスラッガーを巡って、メジャー複数球団による争奪戦が予想される。

2016年の交流戦で、サヨナラ本塁打を放った瞬間の鈴木誠也選手

 ここでは、日本を代表する打者へ成長するまでの鈴木のプロ9年間の軌跡を辿る。今回はプロ4年目の2016年、3試合連続決勝本塁打と「神ってる」活躍直後に行ったインタビューの前編をお送りする。

◆「最高」という言葉しかなかった

─交流戦・オリックス3連戦の2試合連続サヨナラ本塁打、3試合連続決勝本塁打と、ものすごい活躍でした。今改めてあの3日間を振り返ってどんな気持ちですか?

「自分でもどうして打てたのか、球場で何が起きたのかよく分からない感じでした。自分が何でこんなに変わったのかも分からないですね(苦笑)」

─2試合連続サヨナラ本塁打の場面、どんな気持ちで打席に入っていたのですか?

「1日目は前の打席のときにサヨナラ勝ちのチャンスで抑えられていたので、『ここで何とか打ちたい』という気持ちだけで打席に入っていました。2日目はそんなことも思わず、『ボテボテの当たりでゲッツーでもいいから1点取りたい』という気持ちで打席に入っていました。マジで奇跡だと思います(笑)」

─プロ初のサヨナラ本塁打の翌日、試合では鈴木選手の全打席でファンのみなさんの歓声が違ったように感じました。

「確かにあの日はすごいなと思いましたが、特にプレッシャーを感じることはありませんでした。あの試合は僕の後が新井(貴浩)さんだったので、『新井さんに任せよう』という意識でした。とにかく今は後ろにつないでいこうという意識しかないので、それが良い方向にいっていると思います。新井さんが後ろにいてくれるだけでも安心感がありますからね」

─ヒーローインタビューでは『最高でーす!』を連呼するなど、スタンドを沸かしました。

「1日目に『最高です!』を何度か言って、終わった後にチームのみんなに『最高です! だけでいけ』と言われたんです。それで2日目のヒーローインタビューはそれを貫き通しちゃいました(笑)。でも、3日目のヒーローインタビューはさすがに、これではヒーローインタビューにならないと思ったので……、ちょっとだけ話をさせてもらいました(苦笑)」

─3日連続でヒーローインタビューを受けるというのは、どんな気持ちでしたか?

「本音を言うと興奮しているので、あまり喋りたくはないんですよね(苦笑)。自分でもどうして打てたかが分からなくて、どうやって気持ちを伝えれば良いか分からなかったですし、『最高!』という言葉しかないんですよね(笑)。でもこれは本心です」

─ヒーローインタビューといえば、水掛けパフォーマンスもすっかり定着してきました。

「今年はどちらかと言えば、記念すべき試合のときにやることが多いですね。自分で水をかぶったときがありましたが……、あれは琢朗さん(石井・当時一軍打撃コーチ)に『自分でかぶれ!』って言われたのでやりました(笑)」

─この活躍ぶりに、ご家族も喜んでいたのではないでしょうか?

「父親からは連絡があって『こっちは鳥肌が立ったぞ』と言われましたが、『ありがとう。でもこれからだから浮かれない』というような会話をしました。周囲は乗せてくれますが、それに乗りたくないですし、家族にも乗られると嫌なので(笑)。もちろん喜んでくれるのはすごくうれしいですけど、家族から言われると僕も浮かれそうになるので、『何も言わないで』と、家族には言っています(苦笑)。今後打てなくなることが絶対にあると思うので、まずは一日一日を必死にやっていきたい気持ちだけです」