サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。現在、11勝13分13敗でリーグ12位のサンフレッチェ広島。沢田謙太郎ヘッドコーチが監督として指揮を執ることになってから、いまだ勝ち星がない。苦しい戦いが続いているが、シーズン最終戦となる12月4日の徳島戦は、来季につながる試合をみせたい。今回のコラムでは、11月7日の湘南戦の印象的なシーンを振り返る。

10月下旬に沢田が新監督に就任。11月3日の鹿島戦からチームは新たなスタートを切った。

◆粘り強い戦いは高く評価。ただし攻撃面に課題が残る

 湘南戦(△0-0)は、前半の早い時間帯に柴﨑晃誠がVARでレッドカードを出されてしまいました。おそらくVARというシステムがなければイエローカードで流されているプレーだったと思います。

 相手の膝に接触する際、スパイクの裏が見えたためにレッドカードという判定になったのですが、これはスライディングを仕掛ける流れの中で仕方ない動きとも言えます。たまたま柴﨑の足が上がってしまい、そこに膝があったというだけだと捉えています。

 悪質なプレーであれば、最初から足が伸びているので一目瞭然です。ただ、「スパイクの裏が見えていて、相手の膝に向かっている」という映像がある以上、レフェリーとしてもレッドカードを出さざるを得ませんでした。

 柴﨑の退場により、早い時間帯から1人少ない状況で戦わないといけなくなりましたがよく守り切りました。まるで沢田謙太郎新監督の魂が乗りうつった戦いのようでした。

 沢田監督は現役時代、J2降格を左右する大事な試合で、サイドバックから駆け上がり劇的ゴールを決めた経験を持つ男。J1残留を引き寄せた不屈の男です。城福(浩)前監督は、絶対に諦めないという気持ちや、靴一足分の寄せなどをチームに浸透させてきましたが、これからは沢田監督が、チームにもっともっと不屈の精神を植え付けていってくれるような気がしています。それが、バトンを託された沢田監督に課せられたことだと感じますね。

 また、久々の出場となった柏好文と松本泰志の活躍も良かったです。人数が少なくパスコースがない中では、柏のようにボールを持ち、2人ぐらいかわしてくれる選手がいると非常に助かります。あの数秒間をつくってくれるだけで、DFラインを押し上げることができますし、前線の選手もより効果的に動けます。

 そして、1人少ない状況の中、松本の運動量も光りました。数字には残らないものですが、こういった献身的なプレーはすごく大事です。粘り強く戦いましたが勝つことはできませんでした。

 今回のように数的不利になったときには、相手が押し上がってくるのを逆手に取り、守備からのカウンターを仕掛けるしか勝つ方法はありません。それが1本も発動できなかったというのは残念な点です。カウンターで得点を取れるようになると有利に戦えます。贅沢な要求ではありますが、前述した通り、カウンターに対応できるスピードのある選手がいるだけに、来シーズンはぜひ課題として取り組んでもらいたいです。