いよいよ始まった2022年。昨年はカープ、サンフレッチェ共に、思うような結果を残せなかったが、若手が台頭するなど、未来への希望を抱かせてくれる戦いを見せてくれた。また、東京五輪が開催されるなど、スポーツがおおいに盛り上がった一年になったと言えるだろう。

 広島アスリートマガジンWEBでは、これまでカープやサンフレッチェをはじめ、広島のスポーツの魅力を伝えてきた。そこで、昨年特に反響の多かった記事を振り返り、2022年のスタートを切る。

 ここでは、松本有史スカウトと鞘師智也スカウトに、“隠し球選手”発掘の瞬間を聞いた記事を取り上げる。(2021年11月19日・20日掲載)

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◆同学年の鈴木誠也と共にカープ打線を牽引する打者へと成長

ドラフト5位で入団した西川龍馬。高評価を得ていた打撃を武器に、プロ1年目から勝負を決める数々の印象的な一打を放ち活躍した。3年目の2018年には打率3割を記録し、2019年には2桁本塁打を放ち規定打席にも到達した。

【松本スカウト談】
 ここ数年の会心の指名は西川龍馬(2015年ドラフト5位・王子)です。龍馬は私が視察に行くたびに打っていたので、運命めいたものを感じていました。

 ただこの時、龍馬は社会人2年目で、全国的に注目されている選手ではありませんでした。なので、当時の川端編成部長に「翌年になると必ず上位候補になる選手です」と伝え、指名にこぎつけました。

 もう一人、印象深いのは大盛穂(2018年育成ドラフト1位・静岡産業大)。社会人チームを数社落とされ進路に迷っていましたが、大学の監督には「絶対に獲ります」と伝えるほど、私は大盛に光るものを感じていました。

 言葉では表現できませんが、選手を見た瞬間に感じた“直感”を信じて成功した選手の一人です。

◆一番惹かれたのは石原の野球に取り組む姿勢

ドラフト5位で入団した石原貴規選手。プロ1年目の昨季は二軍で盗塁阻止率.355をマークし、捕手として光る能力をみせた。課題の打撃に磨きをかけて挑んだ2年目の今季、一軍で60試合に出場した。

【鞘師スカウト談】
 2021年、プロ初の一軍出場を果たすと、シーズンを通して60試合に出場した石原貴規(2019年ドラフト5位・天理大)は思い入れのある選手です。

 当時、石原のもとには、12球団どこからも調査書が届いておらず、本人も社会人入りを考えていました。ただ、私は石原は必ずプロで通用すると思っていました。なぜ他の球団は石原を見に来ないのかと思っていたほどです。

 捕手としてのプレーももちろんですが、一番惹かれたのは石原の野球に取り組む姿勢です。とにかく真面目でストイック。周囲に聞いても同じ答えが返ってきたので、『他球団の評価は関係ない』と覚悟を決めて、球団に石原を推薦しました。

 迷った時は自分の目で見たものを信じる、そのことを改めて教えてもらったことを含め、石原との出会いで学んだことは数多いです。 

●松本有史(まつもと ともふみ)
1977年5月1日生、広島県出身。崇徳高-亜細亜大を経て、1999年ドラフト7位でカープに入団。現役時代は長打が魅力の内野手として活躍した。2005年限りで現役引退すると、翌2006年からスカウトに転身。現在は主に東海地区を担当し、堂林翔太、菊池涼介、九里亜蓮らの獲得に成功した。今年のドラフトでは、中村健人(ドラフト3位)、田村俊介(ドラフト4位)などを担当した。

●鞘師智也(さやし ともや)
1980年5月6日生、大阪府出身。報徳学園高-東海大を経て、2002年ドラフト4巡目でカープに入団。現役時代は俊足巧打の外野手として活躍した。2010年限りで現役引退すると、翌2011年からスカウトに転身。現在は主に関西地区を担当し、岡田明丈、小園海斗、林晃汰らの獲得に成功した。今年のドラフトでは、黒原拓未(ドラフト1位)、森翔平(ドラフト2位)などを担当した。