いよいよ始まった2022年。昨年はカープ、サンフレッチェ共に、思うような結果を残せなかったが、若手が台頭するなど、未来への希望を抱かせてくれる戦いを見せてくれた。また、東京五輪が開催されるなど、スポーツがおおいに盛り上がった一年になったと言えるだろう。

 広島アスリートマガジンWEBでは、これまでカープやサンフレッチェをはじめ、広島のスポーツの魅力を伝えてきた。そこで、昨年特に反響の多かった記事を振り返り、2022年のスタートを切る。

 ここでは、昨年オフに朝山一軍打撃コーチに取材した記事を取り上げる。2020年のチーム打率.262。2021年は.264。昨季は12球団トップのチーム打率を記録し打撃陣の底上げは着実に進んでいる。得点力をアップさせるには何が必要か。その鍵を朝山一軍打撃コーチに聞いた。(2021年12月2日掲載)

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◆得点力アップの鍵を握る機動力

カープ野手陣にとって、今季は得点力アップが課題となる。(2021年春季キャンプ中の写真)

 チーム打率は12球団トップの・264。2割6分を超えているのは、選手たちの頑張りがあってのものなので、合格点をあげてもいいのかなと思います。しかし、その分、得点数(リーグ3位)が少なかったのが課題です。安打は出ているので残塁が多いということですし、それに加えて長打が少なかったというのもあると思います。

 チームバッティングの面では、ゴロを打ってほしい時に打てないケースが多かったです。ただ、ランナーが三塁のいる場面での犠牲フライの数はリーグ1位(34個)。外野フライは常に打てるようにしよう、どこを狙えばフライになりやすいかといった話は普段からよくしていました。

 チームとして安打が出ているだけに、走塁を絡めると、もっと効率的に点を取ることができたのではないかと思います。その際に必要になるのが機動力です。足を使った攻撃と聞くと、盗塁やエンドランのイメージを持つことが多いですが、リーグ3連覇を果たした頃は、ベンチからエンドランのサインはほとんどなかったそうです。

 では、なぜあれほど機動力を駆使した攻撃ができていたかと言うと、走者がフリーで盗塁を試みて、その投球時に打者がバットを振り、結果的にそれが、〝ランエンドヒット”の形になっていたようです。ここ数年、そういった攻撃ができていないのは、走者は盗塁を仕掛ける数が減り、打者は思い切った打撃ができていないことが考えられます。

 打者が打球をヒットゾーンに飛ばすことができれば、走者はスタートを切っているので一、三塁の場面をつくることができますし、外野の間を抜けたら1点が入ります。盗塁やエンドランだけではなく、ランエンドヒットの攻撃が少なくなっていたという反省点はありますね。

 今季は、若手選手がたくさん一軍で経験を積みました。一軍経験が少ない選手には、早いカウントから積極的にバットを振るように口酸っぱく言ってきました。追い込まれてから対処しようとしても、そんなに簡単にできるほど一軍は甘くはありません。打率を残すためには、早い仕掛けが大切です。若い選手には、選球眼を磨いて四球を奪うことは求めていません。まずは〝自分のスイングをしよう〟ということをテーマに掲げてやってきました。

 そういう意味では、小園(海斗)、林(晃汰)、宇草(孔基)などは、その積極性を忘れることなく、着実に結果も残してくれたと感じています。ただ、来年も同じスタンスのままでは困ります。今シーズンの経験を糧に、今度はしぶとく球にくらいついていく〝粘り強い打撃〟もできてくると、真のレギュラーに育っていくのではないかと思いますね。

 とにかく選手には、安打を欲しがって当てにいく打撃をするのではなく、強いスイングをすることを求めています。当てるだけの打撃では、相手は怖がってくれないので、どんどんストライク先行の配球になります。そうすると球数を投げさせることができず、投手継投を含め、全てが相手のペースになっていきます。

 課題でもある得点力を上げるためにも、相手バッテリーに怖いと思わせる力強いスイングを見せていかないといけません。そういった選手を一人でも多く育てていきたいですね。

●朝山東洋(あさやま とうよう)
1976年7月29日生、福岡県出身。1994年ドラフト3位でカープに入団。怪我に見舞われたプロ生活だったが、2000年には58試合に出場し5本塁打を放った。2004年限りで現役引退。2005年から二軍、三軍のコーチを15年務め、数多くの若手選手を一軍の主力に育てあげた。2020年からは一軍打撃コーチを務めている。