◆災害支援の専門家とタッグ

 それでは、選手会ファンドを通じて集まった資金は、『緊急対応』『復旧・復興』『防災』のために、具体的にどのように使われるのでしょうか。今回選手会がタッグを組んだのは、災害支援のプロフェッショナルとして知られる公益社団法人シビックフォースです。

 シビックフォースは、2011年の東日本大震災以降、ほぼすべての国内災害でいち早く緊急支援活動を展開してきました。

 最近では捜索・人命救助や病院支援にも力を入れ、避難所などでの物資配布や復興を見据えたまちづくりのサポートにも尽力しています。また、日頃から防災活動にも取り組んでおり、選手会の思いを実現するには最高のパートナーと言えるでしょう。

 選手会ファンドに集まった資金は、シビックフォースの専門家としての見地のもと、初動の現地調査を含む災害発生時の支援、および復旧・復興支援や防災啓発の費用として活用されていきます。実は『初動の現地調査』が災害支援ではとても大事で、これによって現場のニーズに合った支援を適切な方法で実践できるかが左右されます。

 しかし、その重要性が一般的にはなかなか理解されていないため、初動調査のための寄付が集まりづらいという現状があるそうです。そういった災害支援の実態を啓発する意味でも、選手会ファンドの存在意義は非常に大きいと言えるでしょう。

 微力ながら、私が運営するNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーション(BLF)も、この選手会ファンド設立にあたって、シビックフォースとの連携やファンドの仕組みづくりをお手伝いさせていただきました。

 これまで8年間、野球×チャリティーの活動をBLFで行ってきましたが、選手会ファンドは日米のスポーツ界を見渡しても非常に画期的な取り組みだと自負しています。また、選手会事務局やシビックフォースの皆様と、「野球界が変わっていく」「野球の存在意義がさらに高まっていく」という前向きな雰囲気の中でこのファンドの設立が実現できたことを、とても嬉しく、また誇らしく感じています。

 たび重なる地震や台風被害、そしてコロナ禍によって、私たちは「明日は我が身」という緊張感に常にさらされています。そんな中、このファンドによって救われる人生、救われる命がきっとあると信じ、これからもプロ野球選手や野球ファンの皆さんと力を合わせ、災害支援を通じて野球の社会における価値をさらに高めていきたいと思います。

 

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。