佐々岡真司監督3年目の今季、チームとしては4年ぶりのAクラス、さらには優勝を目指すカープの春季キャンプがスタートした。鈴木誠也のメジャー移籍で空いた穴はもちろん、年明けから再び猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、「ベストメンバー」で望めているとは言えない今キャンプだが、だからこそ、“若手”にとってはチャンスとも言える。

3年目を迎える今季、一軍初出場に向けてキャンプでアピールを続ける韮澤雄也。

◆実績のない若手がポジション争いの台風の目となれるか

 2022年2月1日、宮崎県・天福球場でカープの春季キャンプがスタートした。

 しかし、キャンプ前に西川龍馬、田中広輔、長野久義らが新型コロナウイルスの陽性判定を受け、チーム合流が遅れることに。

 さらには坂倉将吾、髙橋樹也の2選手がコンディション不良でリハビリ組スタートと、1軍キャンプを「無事」にスタートできていない選手も多い。

 キャンプイン時点の1軍メンバーは以下の通りだ。

■広島東洋カープ1軍キャンプ参加メンバー
<投手>
九里亜蓮、大道温貴、森浦大輔、大瀬良大地、森翔平、森下暢仁、栗林良吏、中﨑翔太、黒原拓未、床田寛樹、ケムナ誠、高橋昂也、塹江敦哉、島内颯太郎、松本竜也、小林樹斗、玉村昇悟、遠藤淳志

<捕手>
中村奨成、會澤翼、石原貴規、持丸泰輝

<内野手>
堂林翔太、菊池涼介、林晃汰、小園海斗、韮澤雄也、羽月隆太郎、二俣翔一

<外野手>
宇草孔基、正隨優弥、中村健人、末包昇大

 特に野手組のメンバーが「ベスト」と呼ぶには程遠いことが分かる。

 ただ、まだ1軍で実績のない若手選手からすれば、この状況は逆にチャンスとも言える。

 故障やアクシデントで主力選手が戦線を離脱し、その穴を埋めた若手選手がレギュラーに定着するケースはプロの世界でも決して珍しくない。

 チームにとっての“ピンチ”を自らの“チャンス”に変え、春季キャンプから首脳陣にアピールすることができれば、開幕1軍はもちろんその先にあるレギュラーもぐっと近づくはずだ。

 中でも注目したいのが、内野手なら高卒3年目の韮澤雄也、外野手ならドラフト3位ルーキーの中村健人だ。

 韮澤は埼玉の名門・花咲徳栄高で1年春からレギュラーを掴み、2年夏、3年夏と甲子園に連続出場。3年時にはU-18W杯日本代表にも選出されている。

 同期の「2001年世代」には佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、宮城大弥、紅林弘太郎(ともにオリックス)、森敬斗(DeNA)、及川雅貴(阪神)、さらにはチームメイトの玉村昇悟ら、すでに1軍で結果を残しつつある選手がおり、今プロ野球で一番勢いのある世代と言える。

 プロ2年間で1軍出場はないが、昨季2軍では74試合、打率.255、4本塁打をマークするなど着実に経験を積み、3年目の今季、1軍キャンプに大抜擢。遊撃手には1学年上の小園海斗がいるが、一塁、二塁の守備経験もあり、アピール次第では「菊地涼介の後継者候補」に名乗りを上げてくるかもしれない。

 ルーキーの中村健は中京大中京、慶応大、トヨタ自動車と各カテゴリで「名門」に所属。そのすべてで「全国大会」にも出場している野球エリートだ。

 打撃ではパンチ力と確実性を兼ね備え、走塁・守備も一級品。

 ほぼ確実な鈴木誠也のメジャー移籍もあり、周囲からはどうしても「ポスト・鈴木誠也」と呼ばれがちだが、タイプ的には長野久義の方が近い。

 ルーキーではあるがアマチュア実績も豊富で年齢も23歳。キャンプでの1軍抜擢も不思議ではないが、ここでしっかりとアピールできれば外野手レギュラー争いに参戦してくるのは間違いない。

 昨季のDeNA・牧秀悟のような活躍を期待したくなる選手だ。

 韮澤に中村健、プロでの実績はほぼゼロの2人の野手がキャンプでアピールに成功すれば、レギュラー争いはさらに激しくなる。そしてそれが、チーム力アップ、ひいては2018年以来の“優勝”にもつながるはずだ。