4年ぶりのリーグ優勝に向けて、一軍は日南(宮崎県)、二軍は大野(広島県)で春季キャンプをスタートさせたカープ。カープOBの笘篠賢治氏に春季キャンプのポイントを聞いた。鈴木誠也が抜けた野手陣、カープらしい野球を遂行する上で、カギを握る選手は誰か。

得点力アップに向けて、チームとしてどういう野球をしていくか。キャンプでの仕上がりに期待がかかる。

◆山田哲人でさえ、良い成績を残した翌年は怖いと言っていた

 2月1日から春季キャンプがスタートしましたが、コロナの影響でギリギリでメンバーの離脱がありました。ただ、これはカープだけでなく他球団も同じ状況です。開幕が近づいての離脱だと、せっかくの調整が台無しになってしまいかねませんが、現段階ではまだ大丈夫でしょう。

 昨年リーグ優勝を果たしたヤクルトは、村上宗隆が自主トレ中にコロナ陽性になっていましたが、遅れを取り戻す時間は十分あります。出遅れている選手たちも、今で良かったとプラスに捉えて、焦らずに再合流してほしいですね。

 さて、キャンプ初日の声出しは堂林翔太が務め「うちのBIGBOSSを胴上げしましょう」と力強い言葉を届けてくれました。優勝するんだという気持ちを口に出すことは大事ですからね。CSがあるからAクラスでもいいではダメなんです。振り返ると、自主トレ一番乗りも堂林でした。昨季悔しい思いをしているだけに、今季にかける思いが伝わってきますよね。

 今季はなんといっても“打線をつくり直すこと”が重要視されます。

 これまで4番を務めていた鈴木誠也がチームを去り、そして9回延長なしから延長12回制に戻り、その中でチームとしてどういった戦い方をしていくのか。打ち勝つというのは大事ですが、投手陣を含めて僅差を乗り切って勝っていくという戦い方になっていくのではないかと開幕前の現時点では予想しています。

 そのために野手陣ではどのような点のとり方をしないといけないのか。当然、長打を集め大量得点を奪う攻撃をみせれたらいいのですが、毎試合そのようにはいきません。昨季の終盤に見せてくれた“機動力野球”、そこがテーマになってくるのではないかと思います。

 打線を組む上でまず注目したいのは、三遊間コンビを組むことになるであろう小園海斗と林晃汰です。昨季、一軍である程度の結果を残した2人ですが、今季、間違いなくマークはキツくなるでしょう。他球団もデータはそろっているので、これまで通りがむしゃらにやっていては壁にぶち当たるかもしれません。

 ただ、これは全選手に言えることですが、ペナントレース最初の1ヶ月間で迷ってしまわないようにしてもらいたいですね。そのためにもこのキャンプでいい準備をして、不安な気持ちに打ち勝てるようにしてもらいたいです。

 山田哲人(ヤクルト)でさえ、良い成績を残した翌年は怖いと言っていましたから。あれほどの選手からそんな言葉が出てくるんです。そういった不安はみんな持っているものですから、あまり気にしないように“自分のプレー”をしてもらいたいです。

 外野の争いも激しくなってきます。野手キャプテンを任された野間峻祥は、濃厚接触の疑いでキャンプ初日には間に合いませんでしたが、今季やらなくてはいけないことは本人が一番わかっているはずです。1年間ケガをせず、打って走って守って、今年のカープ野球の象徴になってもらいたいですね。

 機動力野球というところでは宇草孔基も負けていられないでしょう。そこに羽月隆太郎や大盛穂も加わってくると、面白くなりそうですよね。

 ルーキーの末包昇大も初日から長打力をアピールしていました。中村健人もそうですし、やっぱり1年目というのは目立つ存在ですからね。そこに正随優弥なんかは良い刺激を受けていることでしょう。彼らに比べてプロとしての経験値はありますし、慌てずに、自分を見失わないように、これまでやってきたものを出していってほしいです。