サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。新シーズンに挑むチームへの想いを語ってもらった。※取材は2月上旬。

今季も広島の中盤を支える活躍が期待される青山敏弘。

◆監督不在もリモートで連携をとり取り組んだキャンプ

 さあ、新シーズンの幕開けです! 新型コロナの影響でスキッべ新監督が入国できず、監督不在でチームが始動するという異例のスタートとなりましたが、コーチ陣と監督とがリモートで連携を取りながらキャンプでの練習に取り組めていると感じています。

 今シーズンは現有戦力を中心に戦っていくことになると思うので、1月20日から始まった熊本での一次キャンプは、個人の〝フィジカル強化〟を目的とした内容が中心のメニューになっていました。ケガをしている選手はしっかりと治して、シーズンを通して戦えるだけの体を作る。選手のコンディションを上げて、いい状態でスキッべ新監督にバトンタッチをしたいという、迫井深也ヘッドコーチの考えがあったのだと思います。

 私が熊本キャンプへ取材に行ったときには、インターバルトレーニングといって、ダッシュを短い間隔で繰り返し行うトレーニングをしていたのが印象的でした。最初のうちは、みんな笑顔で取り組めているのですが、ダッシュが9本、10本ぐらいになると笑顔もなくなり本当にキツそうでした。

 私も経験がありますが、ボールを持たずに走る、いわゆる〝素走り〟というのが、サッカー選手にとっては一番しんどいんですよね。同じ走るにしてもボールがあればまだ楽しいのですが、ただただひたすら〝走るだけ〟というのは、意外とキツイ。でも、みんなすごく精力的に取り組んでいたと思います。

 特に充実しているように感じたのは、青山敏弘をはじめとするベテラン勢です。ダッシュを繰り返していると、そのうちに疲れて体が上下にブレてきたりするものなのですが、青山は軸が全くブレないのはさすがでしたね。股関節から動かすという、池田誠剛・元フィジカルコーチから受けた指導をしっかりと意識できている証拠だと思います。

 GKの林卓人も同様に、自分の体をすごく分析しながらトレーニングに取り組んでいることが伝わってきました。彼も、単純に体を鍛えるのではなく「どう動かせば可動域が増えるか」など、科学的な指導のもとトレーニングを続けているようです。今年で40歳になりますが、歳を重ねるごとに自分の体と向き合い、正しい体の動かし方ができている。青山や林のようなベテランがいることが、チームの財産になっているのは間違いないでしょう。