4年ぶりのリーグ優勝に向けて、オープン戦に突入したカープ。ここでは、配置転換となったコーチ、新任コーチについて、OBの笘篠賢治氏が語っていく。
※取材は2022年2月中旬。

今季から一軍野手総合コーチに就任した東出コーチ(左)。かつては一軍打撃コーチを務め、昨季まで二軍コーチとして若手を指導。多くの若手を知り尽くす中での指導に期待がかかる。

◆選手との距離感の近さを生かした指導を

 キャンプで野手陣の練習から感じたことですが、全選手のメニューとして走塁練習をしているところを見ていると「今年は足を使った野球をするんだ」というテーマを持ち、チーム全体の意識改革に取り組んでいる印象を受けました。個々の選手に対してもそうした指導をするシーンが目立ちます。

 たとえば小園に関して言うと、盗塁という部分では、スタートのスピードが物足りないように感じます。しかし、少しでも早くトップスピードに乗っていけるような走り方であったり、スタートにしても徹底的に教え込もうという動きが見られました。それだけ「今季は機動力を」という意識を感じました。

 キャンプでたまたま昨年まで中日監督を務められていた与田剛さんとお話しをする機会があったのですが、「前半戦のカープの攻撃は淡白に見えた」と話されていました。

 しかし後半戦は足を使いながら、爆発する怖さもあったということでした。実際に戦った相手チームの指揮官がそう感じたということは、昨年の後半戦に良い攻撃ができていた証拠ですよね。そう考えると、機動力野球というのは、武器としていきたいところです。

 そのような方針の練習では配置転換となったコーチ、新任コーチなど、それぞれが精力的に指導している姿が印象に残りました。今季から一軍野手総合コーチとなった東出コーチですが、彼は昨季まで二軍で多くの若手を見ています。それだけに、若手選手からすれば今まで自分たちを見てくれていたコーチが一軍にいる状況なわけです。少しの変化なども含めて、昨季から引き続きアドバイスをすることもできるでしょうね。キャンプではそのように感じるシーンもありましたし、昨季とは違う風を吹かせてくれるのではないかと思います。

 そして野手コーチで新任なのが小窪哲也内野守備・走塁コーチです。彼は引退したばかりで初のコーチ業となります。それだけに外から見ている感じではまだ大人しい印象がありました。

 私自身の話になりますが、33歳で引退してすぐにカープのコーチに就任させていただきました。当時は選手と年齢が近いこともあり、コミュニケーションを積極的に図りました。小窪コーチは若いだけに、選手側からしても話がしやすい状況が生まれやすいでしょうね。

 私の場合は自分の経験を伝える中で、自分自身、話術を意識しながら指導していました。やるべきことはちゃんとやらせなければいけませんし、力を抜くところはきちんと抜かさないとケガにもつながってしまいますから、ケガにつながらないような厳しい練習をするのは間違いありませんから、そのなかで集中力を持ってやってもらうために、どうやって盛り上げていくかという話術の部分も考えながら取り組んでいたつもりです。

 そういう意味では、小窪コーチはフレッシュなわけですから、選手との距離感の近さを生かして、若手たちを育てていってほしいですね。そして何より、彼はカープ退団後には独立リーグに挑戦し、そこから再びNPBに復帰したという経験があります。年齢も36歳とまだまだ若いですし、遠慮をせず自分の経験を伝えていってほしいと思いますね。