シーズンが開幕してからも競争が続くことが予想されるポジション争い。キャンプ、オープン戦に取り組んできた中で、野手陣のポジション争いがどのように進んできたのか。今回のコラムでは、そのあたりを中心にカープOBの笘篠賢治氏に語ってもらった。
※取材は3月中旬。

右のスラッガーとして虎視眈々と一軍昇格を狙う4年目の正隨優弥。二軍では結果を残しているだけに、少ないチャンスをしっかりとつかみ、今季こそは一軍に定着したい。

◆オープン戦で感じた優先順位に対する違和感

 ポジション争いですが、三塁手に育成の二俣翔一など、さまざまな選手をオープン戦で起用してきましたが、カープの未来を考えると、4年目の林晃汰に実戦の機会をどんどん与えるべきだったのではないかと感じました。

 林は昨年、一軍で結果を残しているだけに、実戦機会を〝与えなければいけない〟選手です。二俣は育成のままだと開幕後は一軍の試合に出場できないだけに、優先順位で考えても林に実戦経験を積ませるべきだったと思いますね。

 優先順位の考え方でいくと、新人の中村健人と末包昇大も即戦力として期待されている存在なので、数多くスタメン機会を与えて力を見極めることに務めたのは良かったと思います。

 一方で、4年目の正隨優弥はほとんど出番を与えてもらえないまま二軍降格となりました。ただ、正隨は二軍で本塁打を放つなど活躍しています。一軍経験があり結果を残している以上、新人選手や育成選手よりも正隨の優先順位を上げても良かったのではないかと思いますね。オープン戦での林と正隨の起用法を見る限り、首脳陣の優先順位の付け方には違和感を感じずにはいられませんでした。

 ただ一方で、新人の中村健と末包の打撃はキャンプの時よりも、かなり良くなっている印象です。特に末包は、体の開きが早いという課題が改善されており、センター中心に強く振れるようになっていました。インサイドの球を上手くさばけていない印象があるので、打つポイントをもっと前にできるようになれば、詰まってバットを折られるということも減ってくるはずです。

 キャンプを見ていても中村健は基礎はしっかりできていましたから、課題はリストの使い方です。彼はリストが強い分、右手を早く使いたがり、外から巻き込んで引っ張る傾向があります。一軍で活躍するためには、右手をもっと上手く使えるかがポイントになってくるでしょう。トヨタ自動車では4番を経験し、もともと力はある選手ですから、リストへの意識を変えるだけで、広角に上手くさばけるようになるのではないでしょうか。もっと実戦経験を積ませるのであれば、思い切って二軍に送り、より多くの打席を経験させるのもいいと思いますね。