カープの正捕手として君臨し、リーグ三連覇にも大きく貢献。2018年・2019年には選手会長の重責も担った會澤翼。2021年からは日本プロ野球選手会の会長に就任した。プレーヤーとリーダー、2つの役割を巧みに使い分け、数々の修羅場をくぐり抜けた16年目捕手が語る『リーダー論』とは。(全3回のうち1回目・取材は2022年3月上旬)
◆捕手視点で分析する、カープ投手陣の魅力
─2021年はケガによる離脱があり、悔しい一年だったのではないかと思います。それを踏まえ、2022年はどんな意識で春季キャンプを過ごされましたか?
「キャンプは例年と変わらず、シーズンに向けて良い準備ができるように取り組んできました。ただ、ケガの予防、特に下半身のケアはこれまで以上に意識しました。トレーナーの方と意見を交わしながら、良い方向に進めることができたと感じています。今年でプロ16年目。年齢的にも決して若くないので、ケガをしないように、自分の体の状態には常に気を配っていました」
─坂倉将吾選手や石原貴規選手など、若手捕手が台頭してきました。會澤選手自身、そういった若い選手からどんな影響を受けていますか?
「特別な影響は受けていません。捕手のポジションは一つしかありませんから常にライバルはいるものです。それよりも〝自分のやるべきことをしっかりと全うする〟ことに意識を集中しています。その上で、チームとしては次の世代が育っていかないといけないので、見ていて気になったことがあれば声をかけるようにしています」
─投手陣にも若い選手が増えてきています。捕手として、カープ投手陣の現状をどう見ていますか?
「本当に活きの良い若手がたくさんいます。その相乗効果で、投手の間でも良い競争ができているのではないでしょうか。今年はどの投手も、昨年以上に高い意識を持ち練習に取り組んでいるように感じました。大切なのは気持ちの在り方です。〝一軍のマウンドで活躍するんだ〟という気持ちが強い選手ほど、生き残っていくのではないかと思いますね。いずれにしても、捕手として投手全員に期待しています」
─大瀬良大地投手、九里亜蓮投手、そして森下暢仁投手。リーグ屈指の先発3本柱が持つそれぞれの魅力を捕手の視点で教えてください。
「まず大地は、投手陣を引っ張っていく自覚があるのが何よりも心強いです。また、相手打者の様子や試合の流れを読んで投球できる投手なので、それも大きな強みだと思っています。年々進化していますし、現状に満足せず、成長を止めないのも大地のすごいところですね。その姿勢は、若い投手に間違いなく良い影響を与えているはずです。そういった意味でも、僕自身、強く信頼している投手です」
─今季から投手キャプテンに就任した九里投手の印象は?
「昨年、初タイトルとなる最多勝を受賞したことが自信につながっていると思いますし、良い影響を与えているはずです。とにかくタフな投手ですから、今年も昨年同様の活躍をしてくれると期待しています。森下も、プロ入りから2年連続で大きなケガもなく先発ローテを守り抜いたという実績が自信になっていると思います。また、一人の投手として、同じポジションの大瀬良や九里に負けたくない気持ちも強いでしょうから、今年はこの3本柱で切磋琢磨しながら成長していってほしいですね。期待しています」
─昨年新人王を獲得し、今年も守護神を任される栗林良吏投手に対してはどんな印象を持っていますか?
「昨年は素晴らしい成績を残しましたし、今年の春季キャンプを見ていても、ぶれることなく自分のことをしっかりと把握している印象を受けました。ただ2年目のシーズンは、思うような結果を残せないなど、予期せぬことが起こる可能性もあると思います。それをネガティヴに捉えるのではなく、良い経験ができたと前向きに捉えることで、さらにスケールの大きい投手に成長していくと思います」
─春季キャンプでは、會澤選手が投手陣にアドバイスを送る場面も数多く見られました。若手の代表格とも言える森下投手と栗林投手には、何か声をかけられましたか?
「森下も栗林も自分のやるべきことを理解している投手なので、キャンプ中は特にアドバイスはしていません。ただ3月5日の西武とのオープン戦で栗林が失点した際には、それが栗林にとってマツダスタジアム初失点だったこともあり、『2年目はいろいろなことが起こるだろうけど、結果をしっかり受け止めて、一つずつ解決していけばいいから』と声をかけました。ペナントレースを戦っていくなかで、気がつくことも出てくるでしょうから、投手のためになると思えば、その都度、声をかけていこうと思います」(続く)
◆會澤翼(あいざわ・つばさ)
1988年4月13日(33歳)/茨城県出身/175cm・89kg
右投右打/捕手/水戸短大付高-広島(2006年高校生ドラフト3巡目)