3月・4月は、持ち味の“つなぐ攻撃”が目立った2022年度版のカープ打線。今回はシーズン序盤に活躍した選手を中心に、OBの笘篠氏がカープ野手陣について語っていく。
※取材は4月上旬。

プロ10年目にして初の開幕スタメンとなった上本崇司。粘り強い打撃を展開し、存在感をアピールしている。

◆つなぐ意識で好調な打線。西川と上本がポイントに

 打線については、メジャーに移籍した鈴木誠也の穴を不安視される声が多くありました。しかしながら、全員が〝次へつなぐ野球〟を意識した結果、効率良く点を取ることができています。必要なところできっちりと犠打を決めていることも見逃せません。

 全員が「いま何をすべきか」という役割をしっかりと理解し、最善の状況判断ができていると思います。打つだけではなく、たとえば四球を選んで出塁することなど、各選手が状況をよく把握した攻撃ができた結果の開幕6連勝だったように感じます。

 開幕から好調の打線ですが、基本的に上位は一番・西川龍馬、二番・菊池涼介、三番・小園海斗という打順が多く組まれています。その中でも注目したいのが、西川龍馬です。彼はチャンスメーカーとしての役割を果たしながら、ポイントゲッターとして打点も挙げるなど、両面で活躍を見せています。彼が光ることで打線に勢いと流れをもたらしているように思います。

 そして、一番の西川がポイントゲッターとなり得る流れを生み出すという意味では、主に下位打線を任されている上本崇司の存在が大きいですね。4月上旬時点で出塁率は5割近く、得点圏打率も4割を越えていましたが、確実に開幕ダッシュにおける打線のキーマンと言える活躍ぶりです。彼は選球眼も良く、粘りを見せながら相手投手に球数を投げさせ、四球を選んだり安打を放ったりと非常に良いつなぎの役割を果たしています。上本はもともと相手にとって〝いやらしい〟攻撃をできる選手でしたが、今シーズンに関してはその持ち味をしっかりと発揮していますね。

 年々打撃能力が上がっていますが、その中で〝見送り方〟が持ち味だと感じます。中でも球の高低に関する見極めは素晴らしいですし、自分のストライクゾーンのイメージ設定がしっかりとできているのだろうと思います。

 これから上本がシーズンを通してフルに活躍するために重要なのは、疲れを残さないことでしょう。彼は今季も外野を守ったり、内野を守ったりと複数ポジションを守っていて、ユーティリティープレーヤーとしても存在感を見せていますが、相当な疲れも出てくる可能性があります。私自身もいろいろな守備位置を経験しましたが、さまざまなポジションを守るということは、試合だけではなく、準備や練習も他の選手の倍以上になりますし、かなりタフな役目です。1年間試合に出るということは、技術だけではなく、体調管理もとても大事になってきます。

 上本には欠かせない戦力として1年間通して頑張ってほしいと思うのですが、良い意味で力を抜くところは抜きながら、メリハリをつけながら取り組んでほしいと思います。