『みんなDE防災2022』に選手会も協力。サイングッズが当たる企画も開催された。

◆もしもの時の備え、できてますか?

 3月16日夜、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生しました。地震直後から東北・関東で停電や断水が起き、翌日からは東北新幹線が一部運休。東北4県では多くの学校が休校になるなど、人々の生活に大きな影響を与えました。それ以降も様々な地域で震度3以上の地震が相次いでいます。

 東日本大震災後、日本人の価値観には大きな変化がありました。助け合うこと、すなわち、ボランティアや寄付などの『支援』はより身近なものになりましたし、災害に対する『危機管理』の意識も大いに高まったことと思います。海外に住んだ経験からも、日本人の防災リテラシーは比較的高いほうなのではないかと個人的には感じています。とはいえ、災害が起きた時のことを常に想定しながら日常生活を送るのはなかなか難しいもの。いつ来るかわからない『その時』に対し、最低限どのような備えをしておくべきなのか。それは、災害大国日本に住んでいる限り、ずっと向き合わなくてはならないテーマでもあります。

 昨年12月、災害時の緊急対応、復旧・復興、防災を目的とした『選手会ファンド』が発足したことは以前この連載で紹介しました。選手会会長の會澤翼選手は特に防災についての重要性についてふれており、2014年に広島で発生した豪雨災害を振り返って「あの光景を目にした時は言葉が出なかった。備えが本当に大事だということを痛感しました」と語っていました。また、選手会ファンドでタッグを組むことになった災害支援のプロフェッショナル・公益社団法人シビックフォースの方々から現場のリアルなお話を聞くことで、會澤選手の中で『備えが大事』という意識がさらに強くなったそうです。

 私自身も選手会ファンドに関わらせていただいている立場として、これを機に防災への理解をもっと深めたいと思い、3月某日、シビックフォースと東京海上日動火災保険株式会社が主催する防災イベント『みんなDE防災2022』に選手会事務局の皆さんとお邪魔してきました。

◆防災知識のアップデートが大事  

 このイベントでは、普段あまり目にする機会のない非常用トイレ、災害時に使えるテントやエアベッドなどを体験してみたり、非常食を試食したりすることができました。特に驚いたのが非常用トイレで、組み立ては簡単なのにとても頑丈で、体の大きな男性が座ってもビクともしません。使い方のレクチャーも受けましたが、これを知っているか知らないかで被災時の不安も軽減されると感じました。

 備蓄啓発コーナーでは、家族構成や住居タイプをタブレットに打ち込むと食料や水、マスク、カイロ、タオルなど約60アイテムの備蓄目安量をシミュレーションしてくれて、その結果をプリントアウトして持ち帰ることができたので、早速実際の備えに役立てられました。また、クイズコーナーでは「スーパーにいる時に地震が発生しました。揺れている最中に取るべき行動は?」「海の近くにいる時に地震が発生。この時に取るべき行動は?」などのクイズに自信満々に回答したものの見事に外れてしまい(笑)、防災の知識がまだまだ追いついていないことを反省。正しい情報を身につける良い機会になりました。

 事前に知識や情報を得ておくことで災害が起きた時の咄嗟の行動や避難所での心構えが確実に変わってくることがイメージでき、會澤選手の『備えが大事』という言葉を私も再認識することになりました。また、防災アイテムが日々進化していることも実感。情報をアップデートするためにも年に一度くらいのペースでこのようなイベントに参加すると、防災リテラシーも自然と上がっていくのではないかと思います。

 選手会ファンドの発足を機に、これからはシビックフォースと選手会が『野球』というキーワードのもと、このような防災イベントを開催するプランもあるそうです。野球を頑張る子どもや野球ファンの方々が防災リテラシーを高めて、いざという時に人々の力になる。そんな社会がつくれたら最高ですね。防災というと難しく捉えがちですが、野球を通じて楽しみながら知識を得ることができたら、災害支援をより身近に感じられるのではないでしょうか。今後の選手たちの取り組みに大いに期待です!

 

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。