10月6日に旧広島市民球場でV2を達成したカープ。マウンド上は歓喜に包まれた。

◆日本シリーズの影のMVPは…

 息を吹き返したカープは、8月に入ると勢いをさらに加速させた。中旬には中日をかわし首位に立ち、1分を挟んでの9連勝で9月9日にはマジック19を点灯させた。投打の歯車が噛み合ったカープに、もはや隙は見当たらなかった。

「古葉監督の勝利への執念はある意味すさまじいものがありました。それを象徴するのが、セ・リーグ優勝を決めた10月6日の阪神戦(旧広島市民球場)の試合で衣笠さんにスクイズをさせたシーンです。『衣笠さんにスクイズをさせるのか……』と味方の私でさえ驚かされました。衣笠さんは豪快なように見えますが、バントや右打ちもしっかりこなせるバッターでした。長打力がある打者でも、しっかりチームのための打撃ができるというのが古葉野球の真髄だったのかもしれないですね」

 阪神を4対3で破ったカープは、地元広島での胴上げに成功。4年前からの宿題となっている日本一に向け、チームは一枚岩となって突き進んでいった。ところが近鉄との日本シリーズも一筋縄ではいかなかった。木下氏が「完全に内弁慶シリーズ」と称したように、第6戦まではホームのチームが勝利。近鉄が逆王手をかけた状況で、敵地・大阪球場に乗り込むこととなった。

「シリーズは進み第7戦、1点リードで迎えた9回裏、あの有名な“江夏の21球”が演じられるわけです。実際セカンドを守っていた私としては『おいおい、頼むよ江夏さん』と思っていたのが正直なところです。ただ、そこからの江夏さんはすごかったですね。見事その満塁のピンチを切り抜け、カープ初の日本一達成の胴上げ投手となったのです。並の投手であれば、おそらくウエストした球は暴投となっていたはずです。また、瞬時にスクイズを判断し、立ち上がった捕手の水沼(四郎)さんも素晴らしい瞬発力でした。あのシリーズでMVPに輝いたのは慶彦でしたが、影のMVPは水沼さんだと思います。あのシリーズでの水沼さんの動きは冴え渡っていたました」