サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。4月以降、快進撃が続くサンフレッチェの戦いについて語ってもらった。※取材は5月上旬。

4月6日の横浜戦では1試合2ゴールをあげるなど、目覚ましい活躍を見せる森島司。

◆誰がヒーローになるか予測がつかない選手層の厚さ

 快勝した5月7日の鹿島戦でのフォーメーションはぶっつけ本番でのチャレンジでしたが、結果が出せたことで、今後の選択肢の一つとして強烈なインパクトを残しました。今シーズンは東と松本泰志のボランチ起用もありましたし、チャレンジングな試合が本当に多いです。監督の思い切りの良さが上手く作用して、選手も生き生きとプレーできている印象を受けます。

 ここ数試合、ボランチのサプライズ起用が続いた中で、改めてボランチの仕事の大切さも感じました。特に鹿島戦は、1ボランチとしてプレーした野津田にとっては対応範囲が広く難しいシステムだったと思いますが、影のMVPと評価していいほど頼もしい動きを見せてくれました。本当に素晴らしい成長を遂げていると思います。

 スキッベ監督の特徴に大胆な戦術も挙げられますが、一番の魅力は『モチベーター』としての部分だと思います。選手のやる気を上手く引き出し、若手ものびのびとプレーできる環境を整えています。なかなか出場機会に恵まれない選手であっても、モチベーションを上げるように常にコミュニケーションをはかっていますね。どの選手が試合に出てもしっかりと『自分の色』を出せるのは、そうした監督の方針もあるのでしょう。

 そもそも、今、目覚ましい活躍をしている満田や野津田は、開幕メンバーからは外れていました。その2人が、今やチームの核になって活躍している。選手からすれば『カップ戦で活躍すればリーグ戦に出ることができる』と前向きに捉えることができるでしょうし、『活躍するために、どのポジションであっても良いプレーをする』という好循環が生まれている気がします。次は誰がヒーローになるのか予測が付かない今の状況に、選手層の厚さを感じますね。