◆二軍で苦しんだ期間が、魔球・“パームボール”を生んだ

ーフィジカル面では、ウエイトを増やしたことが好投の一因になっているとお伺いしました。技術的な面で変化させたことはありますか?

「技術面でいうと、今年からパームボールを投げるようになったことが大きな変化の一つです。パームを投げるようになったのも、二軍で過ごした期間がきっかけでした。その頃は二軍の試合でも苦戦していて、試合中にいよいよ『投げられる球がないな』と思うところまできていました。そんな状況で、捕手からチェンジアップのサインが出た時に、『これはもう、いちかばちか、ちょっとやってみよう』と思って投げたのがパームでした。最初こそぶっつけ本番で投げた球でしたが、徐々に二軍では打たれることがなくなってきましたし、打者のタイミングが明らかにずれていることが見て取れるようになりました。昨シーズンの終盤からは、一軍のレベルでも通用するかどうかを確かめるために少しずつ実戦でも投げるようになり、そこである程度手応えもつかめたので、今年から持ち球の一つに加えることにしました」

ー変化球の種類が増えたことで、対戦する相手打者の反応が変わったという手応えはありますか?

「パームで打者の体勢を崩して、次に速い球がくると見せかけてツーシームで落とす、逆に真っ直ぐで押し込むなど、投球のバリエーションが広がったと思います」

ー話題は変わりますが、7月26・27日に開催されたマイナビオールスターゲーム2022では、2試合目で先発登板されました。この試合でもパーム中心のピッチングをされていたのが印象的でしたが、予告先発を告げられた時の率直な感想はいかがでしたか?

「いやいや……正直『最悪や』と思っていました(笑)。絶対僕じゃないでしょう、と。パ・リーグは佐々木朗希投手(ロッテ)が先発していましたが、やはり佐々木くんの投球を目の前で見ていると『球が速いな』と感じましたし、あんな球を見せられると、その後で真っ直ぐは投げられないなとも思いましたね……(笑)。他のチームの左腕投手や野手の選手たちともいろいろな話ができましたし、すごく良い経験をさせてもらえたと思います」

 =後編へ続く=

《プロフィール》
床田寛樹●とこだ ひろき
1995年3月1日生、兵庫県出身
181cm、90kg/左投左打/投手
箕面学園高-中部学院大-広島 (2016年ドラフト3位)
【今季成績】(※8月15日時点)
一軍/17試合 8勝6敗(1完封) 114回 74奪三振 防御率2.84