今シーズン、66勝74敗3分の5位に終わったカープ。4年ぶりのAクラス入りはならなかった。ここではOBの笘篠賢治氏にシーズン終盤の試合を振り返ってもらい、来季の展望について語ってもらった。

 今季限りで辞任した佐々岡真司監督(左から2人目)。佐々岡監督が積み重ねたものを来季以降のシーズンに活かしていくことが期待される。

◆想像できないほどの苦労があった3年間

 カープの2022年シーズンは非常に悔しい終わり方でした。1つでも順位を上にと思っていましたが、結果的に5位。DeNA、阪神にも勝ち越しているんですけどね。8月、9月と勝負どころで勢いを上げることができなかった。それが全てだったように感じます。

 ヤクルトも優勝が決まったあとで、選手を休ませながらレギュラーメンバーを揃えていなかったのですが、同じ条件で阪神はその絶好のチャンスをものにして、カープはできませんでした。

 森下暢仁が先発した29日のヤクルト戦を4点リードから逆転負けして、翌30日もそのショックを引きずったような試合展開でした。29日は2点差に迫られた直後の6回裏、無死一、二塁から會澤翼が送りバントを失敗したあたりから嫌な予感がしていました。

 そして、7回表にターリーが、2死一、二塁の場面で、代打・オスナに対して2ストライクに追い込んでからの甘く入ったチェンジアップを捉えられて逆転3ランを浴びたわけですが、投手有利のカウントの中で、一発を打たれないために内に入ってこない球を選択しなければならなかったはずです。

 シーズン前に四球を減らしていくという方針があって戦っていましたが、チームの真面目な部分が野球に出てしまう面もあったのかなと感じました。

 練習に対しても同じことが言えます。真面目すぎて、疲れているときも全力で取り組んでケガをしたら意味ないですからね。自分も若いときに真面目すぎて損した経験があるので、そのあたりは素直にいきすぎず、多少の余裕もあっていい気がします。

 決して力がないわけではないはずなので、秋季キャンプでもう一度戦い方を見つめ直していかないといけません。

 去年に比べてエンドランなどを仕掛ける場面は増えましたが、やはりチーム盗塁数26というのは、一発を打てる選手がいない打線では物足りない数字ですよね。小園海斗あたりも若いうちにもっと足を使っていってもいいと思うのですが、盗塁が2つで、盗塁死も2つ。これを見る限り足は評価されていないということでしょう。

 ただ圧倒的なスピードがない選手でも、配球やタイミングで盗塁にトライすることができるはずです。じっとしていたら相手バッテリーはプレッシャーもなく楽ですから。来季以降の方針にもよりますが、やっぱりカープらしい野球が見たいですよね。

 あとは3連覇を支えたメンバーが年齢も上がってきていて、田中広輔もそうですし、2軍で3割後半と頑張っていた安部友裕あたりも、もう一度息を吹き返すようなプレーをしないといけません。そこに佐々岡監督がチャンスを与えた若手たちが負けじと頑張って出てこようとする。そういった流れが必要ですよね。

 最後に、佐々岡監督の退任が発表されました。どの球団の監督もそうでしたが、不運だった3年間。コロナ禍という状況で、いろんな波乱が起こるシーズンが続き、かなり苦しかったはずです。連覇した体制の後に請け負うというのも大変なのに、それに加えて、いつ主力がチームから離れるかわからない中で指揮を取るのは、想像できないほど大変だったと思います。本当にお疲れ様でしたと言いたいです。