◆『引き出し』を増やすために、いま一度、土台づくりを

 シーズン中盤以降、苦戦してしまった理由が、果たして疲れだけだったのかという点も問題です。私自身が現役の頃は、ケガや故障は別として、投げられるのであれば、疲れた時や思うように投げられない時には上体よりも下半身の弱りや、疲れを考えていました。自分自身の良い時と悪い時とを把握しておいて、違和感がある時こそ「良い状態に戻すには、今、何が足りないのか」をしっかり抑えておくことも大切です。そうすれば、不調の際でも何をすればいいかが明確になります。「調子が悪い。なんでだろう」と迷うばかりになってしまうことが、一番悪い状況なのです。

 不調もなく、元気で1年間投げ通すということは非常に難しいことです。個人的な考えとしては、悪い時にも対応できる『引き出し』をたくさん持っておくということが重要だと思っています。調子が悪くなった時こそ、悪い状況を乗り切るために必要なものを考えながら身につけること。自分の中で引き出しを増やすということも、143試合を投げ切るための方法の一つなのではないでしょうか。あとは気持ちの部分も重要です。 「今日は調子が悪い」と自分で決めつけるのは、あまり良いことではありません。それを判断するのは相手打者です。悪い時こそ冷静になって、打者の心理状態を考えながら、工夫して投げられるような投球術を身につけてほしいと思います。

 そして、『引き出し』を増やすためには、キャンプでの土台づくり、基礎づくりが大切になってきます。 「このフォームで投げれば大丈夫だ」という確信を持つための鍛錬の場は、やはりキャンプしかないと思っています。  ここ数年で、チームをけん引できる投手の候補が数多く台頭してきたことは、間違いなく佐々岡監督の功績です。種を植えて水をやって、今はようやく芽が出たところです。佐々岡監督が育てた投手たちが開花して、新井貴浩新監督が彼らをうまく起用すれば、カープが再び投手王国になる可能性も十分にあります。まずはキャンプでその土台をしっかりとつくり上げ、来シーズンに向けて備えてほしいと思います。

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