10月20日に開催されたドラフト会議。カープは公言通り、ドラフト1位で斉藤優汰投手を獲得し、ユーモア溢れる指名挨拶を行った新井貴浩監督。ここではOBの笘篠賢治氏に、かつてコーチと選手として過ごした新井監督との思い出について語ってもらった。

現役時代の新井貴浩 監督(旧広島市民球場)

◆苦労して這い上がった努力をみんなが知っている

 新井貴浩監督就任後のチームの雰囲気を見ていると、新しい時代に突入したなと感じます。新井監督の人間性もあるとは思いますが、ドラフト1位の斉藤優汰投手との指名挨拶のやりとりを見ていても、コメントのユーモアの出し方も新井監督らしいですね。やはり、カープを一度出て、外で揉まれた苦労もあったからこそ、真面目な部分とユーモアの部分を持ち合わせているのでしょう。

 その様子を見ていると、これからの選手たちにはスムースにチームに入れる環境になるのかもしれないと感じました。監督はドンと構えていてほしいというのは古い世代の考え方なのかもしれませんね。ヤクルトの高津臣吾監督もフレンドリーさを感じますし、今はこういう雰囲気が大切なのかもしれません。

 個人的に思い出すのは、初めて野村克也さんから褒められたことです。野村さんが阪神監督時代、3連戦のカード頭に挨拶しに行った際「お前のとこはええのう」と言われたんです。最初はなんのことかは分からなかったのですが、それは試合前の練習でユニホームを真っ黒にしている新井のことでした。「下手くそで不器用だけど、一生懸命上手くなろうっていう姿勢を持って、泥だらけになりながら練習しとる。ええこっちゃ」と。ヤクルト時代は褒められたことなんか一度もなかったので、とても印象に残っていますね。

 そうやって、成績を残したのは誰もが認める上で、苦労して這い上がってきたことをみんなが知っている人物です。その努力というのは他の人にはできないことをやっていたと思います。現役時代に「あの新井さんが」と言われていましたが、監督としても「あの新井さんが」と言われるようになってもらいたいですね。