カープ一筋で19年間プレーし、多くのファンに愛された石原慶幸氏。黒田博樹、前田健太、K・ジョンソンらとバッテリーを組み、3連覇を支えた“扇の要”だ。現役引退後、プロ野球解説者としても活躍してきた石原氏は、来季からカープ一軍バッテリーコーチへの就任が発表されている。

 広島アスリートマガジンではこれまで、数々の石原選手(当時)独占インタビューを掲載してきた。ここでは、2021年2月号『永久保存版 石原慶幸引退特集号』より、厳選インタビューの一部を再編集して掲載する。

 今回は2009年の独占インタビューをお送りする。WBC日本代表のメンバーに選出された石原慶幸。貴重な経験を得てカープに合流すると、キャプテンに就任。徐々に変化の兆しを見せていたチームを背負う中心選手として、 マツダスタジアム元年の戦いに臨む石原の思いに迫る。

2010年、広島アスリートマガジンのインタビューに答える石原慶幸。

◆球場の広さは意識せず、今までどおりに

─今季からマツダスタジアムを本拠地としていますが、いかがですか?  

「良い球場だと思います。工事が始まったときから完成を待ちわびていましたし、この球場でプレーできるのはうれしいですね。外野スタンドの感じも全然違うし、ロッカーもウエートルームも広いです。プレーしやすい球場だと思います」

─外野が広くなったことで、旧球場ならホームランになっていた打球がフライアウトになった場面も見られました。リードに関しては違いはありますか?

「僕が思うのは、旧球場は狭かったので、低めに、コーナーに集めようという意識があったんですが、それは球場が広くなっても続けていかなければいけません。広くなったからといって制球がアバウトになってしまったら、今までの良い部分がなくなってしまう。いくら広いといっても野手の間を抜ければ長打は出ますし、僕としては今までやってきたことを続けて、その上で広さがプラスアルファになれば良いと思っています」

─今季はWBC日本代表に選出されるなど、開幕前は慌ただしかったと思います。春季キャンプ中の2月16日にチームを離れ、宮崎での日本代表合宿に参加しました。  

「選んでいただいたことにビックリしていましたし、正直言って最初は『僕にできるんだろうか』と思っていました。ただ、みんなで集まったときには『何とかチームのために貢献しよう』という気持ちに変わっていましたね」

─城島健司選手(元・マリナーズ)や阿部慎之助選手(巨人)といった一流捕手もチームにいましたが、選手個人として感じることはありましたか?

「城島さんや阿部さんともいろいろ話をさせてもらいましたし、一緒にプレーしたり目の前でプレーを見ることができました。勉強になったところはありますが、なかなか言葉では表しづらいですね(笑)。ちょっと説明のしようがないですが、得たものをカープで活かしていきたいと思います」

─他の2人と共に相手チームを視察したりデータを研究したりしていたそうですね。

「相手チームの試合は捕手3人に投手も交えて見に行っていました。その中で考え方や姿勢も勉強になりました。すごく良い経験になったと思います」

─本戦では、第2ラウンドの韓国戦に出場する機会がありました。退場となった城島選手に代わって2イニングの守備のみの出場でしたが、いかがでしたか?

「緊張はしましたが、出場が急だったのでかえってガチガチにはなりませんでしたね。試合に出ているときは勝ちたい一心でプレーしていました。僕は三番目の捕手だと思っていましたし、どうしてもブルペンにいる時間が長くなるのは分かっていました。ただ、それでも自分がどうチームに貢献できるかだけをいつも考えていました」

─日本代表は非常に守りが堅く、それが優勝の一つの要因だったように思いますが、守る野球はカープも目指すところだと思います。

「そうですね。代表では投手が中心になって、野手もしっかりと守ってバックアップしていたのが印象に残っています。カープも投手が中心になってきちっとアウトを取っていくということが重視されていますし、その意識があれば良い結果につながっていくと理解できました。あとは強い気持ちがないと良いプレーも出てこないですし、チーム全体で気持ちがグッと入っていくことがとても大事だと思います」