カープ一筋で19年間プレーし、多くのファンに愛された石原慶幸氏。黒田博樹、前田健太、K・ジョンソンらとバッテリーを組み、3連覇を支えた“扇の要”だ。現役引退後、プロ野球解説者としても活躍してきた石原氏は、来季からカープ一軍バッテリーコーチへの就任が発表されている。

 広島アスリートマガジンでは、これまで、石原選手(当時)の独占インタビューを掲載してきた。ここでは、2021年2月号『永久保存版 石原慶幸引退特集号』より、厳選インタビューの一部を再編集して掲載する。

 今回は2016年シーズン中の独占インタビュー。リーグ首位の座を独走し、25年ぶりの優勝を成し遂げた2016年のカープ。 その原動力の一つが、盤石な投手陣と、チームの頭脳・石原慶幸の存在だった。 “扇の要”として存在感を見せた、背番号『31』の2016年シーズンの思いとは?

石原慶幸とK・ジョンソンの名バッテリーは、2016年のリーグ優勝を大いに支えた。

◆2016年最多勝投手・野村祐輔を変えた、黒田博樹からの影響

─2016年の投手陣はリーグトップの防御率をマークしていますが、好調の要因について、捕手の石原さんが考える要因はどのような点にあると思われますか?

「一番は個々の投手が自分の球を信じて投げていることが今季の好調につながっていると思います。シーズン途中から加わった若い投手も好投して投手力全体をカバーし合うこともありましたし、いろんな要素があると思います」

─シーズンを通じて若い投手の活躍も光っていたように思います。

「たとえばルーキーの岡田(明丈)であれば、常に一生懸命投げてくれているので、球を受けていて『なんとか勝たせてあげたい』と感じています。また若手投手にとっては、やはり黒田(博樹)さんがマウンドに上がって投げる姿、投げるまでの準備などは良い見本になっていると思います。僕がどうこうではなく、黒田さんという存在がチーム、投手陣にいることが大きいと思いますね」

─その黒田投手は2016年に日米通算200勝という偉業を達成されました。今季はバッテリーを組み続けてきてプレッシャーを感じられることはありましたか?

「良い意味でのプレッシャーはいつも感じています。でも日米通算200勝という節目の大記録がかかるなかで受けさせていただいたときは、いつもと違う気持ちになりましたね」

─長年、黒田投手とプレーをされてきた石原選手にとって、この記録は感慨深いものがあったのではないでしょうか?

「200勝という記録は僕らにとっては未知数の数字ですし、すごいとしか言いようがないですね。黒田さんとは僕が入団してから、個人的にいろいろな話をさせていただいて、昨季カープに帰ってこられてからもいろいろな話をさせていただいています。やはり特別な思いを持っていますね」

─黒田投手とバッテリーを組むなかで、今季、組み立てに変化を加えた部分はありますか?

「黒田さん自身があれだけキャリアを重ねているにも関わらず常に進化していこうという方なので、昨季と違う球だったり、同じ変化球でも動きが変わっていたり、それぞれ打者に対しての対応もあります。意識して変えたという訳ではありませんが、その試合で臨機応変に組み立てています。試合中に気づくことがあれば、お互いに相談しながら投球を組み立てていく形になっています」

─先発陣について聞きたいのですが、今季は野村祐輔投手が飛躍的に成績を向上させました。

「投球フォームが変わった部分もありますし、祐輔自身も開幕から良いスタートが切れて勝ち星が先行したことによって、キャンプでやってきたことが間違っていなかったと自信になったと思います。彼は黒田さんと話をしている場面もよく見ますし、黒田さんの影響をかなり受けていると感じますね。捕手としての立場から言えば、先発には毎試合ゲームをつくってほしいという思いがあるので、これからクライマックス・シリーズもありますし、もうひとつ踏ん張って頑張ってほしいと思います」

─石原選手と抜群の相性を見せるK・ジョンソン投手ですが、今季に関してはいかがですか?  

「相手も研究して対策を練っていますし、途中なかなか勝ち星に恵まれなかった時期もありました。そんななかでも試合をつくって、ゲームを壊したことはほとんどないと思います。攻め方に関しても黒田さんと同じく臨機応変に対応して組み立てています」