新井貴浩監督の就任会見から約2カ月が経った。秋季キャンプも始まり、来シーズンへの期待はますます高まるばかりだ。
広島アスリートマガジンでは、これまで、現役時代〜引退後にかけて新井監督の声をファンへ届ける独占インタビューを掲載してきた。ここでは、2019年1月号『永久保存版 新井貴浩』より、インタビューの一部を再編集して掲載する。
今回は25年ぶりの優勝を果たした2016年シーズン終了直後の独占インタビューをお送りする。
◆黒田の表情に救われた
ー日本シリーズですが、残念ながら敗退となりました。終わってみて、現在率直にどのような心境ですか?
「個人的にはすごく悔しいですね。日本シリーズは全く力になれませんでしたからね」
ー第3戦では、結果的に黒田投手の現役最後の登板となりました。
「あのシーンは一生忘れられないですね。黒田さんも本当なら、足がつって降板した時点でマウンドに戻ってこれる状況ではなかったと思います。でも、“もう一度マウンドに上がったらいけるかもしれない”という、僅かな可能性にかけて出てきた黒田さんの姿というのが、黒田さんの生き方を象徴した名シーンだったと思います。3球投げた後、『無理だ』ということを仰ってマウンドを後にされました。普通の投手なら、あの状況ではもう一度出てこれないと思います。そうでない部分が黒田さんの生き様ですよね。僕の中では、黒田名場面集の最後の1ページになりました」
ー第6戦で勝てば、第7戦で黒田投手登板の可能性がありました。惜しくも敗退し、セレモニーではベンチ前で黒田投手と並ばれていました。
「〝今シーズンこれで終わったか……〟という思いでした。そして、“もう一回黒田さんにマツダスタジアムのマウンドで最後に投げてもらいたい”ということが実現できず、悔しい気持ちも同時にありました。ですが、一緒に並んでいた黒田さんを見たときに、清々しい表情をされていました。それを見て、僕も少し悔しい気持ちが救われたところはありましたね」