◆やはり偉大。広島を象徴する選手の一人・青山敏弘
この試合は、青山敏弘の存在の大きさを改めて感じた試合でもありました。決勝の独特の雰囲気の中、もちろん実際に戦うのはピッチに立つ選手たちですが、百戦錬磨の経験を持ち、若い選手たちへの声掛けもできるというのは、青山ならではの強みだと思います。選手たちも「ハーフタイムのアオさんからの声掛けや指示が、すごく勇気になった」と話していましたし、選手だけでなく、大きな身振り手振りでサポーターも盛り上げていました。天皇杯では青山はベンチ外でしたが、ルヴァン杯との大きな違いの一つに、この青山の存在もあったのではないかと思います。
今シーズンはリーグ3位、天皇杯準優勝、ルヴァン杯優勝と、非常に良い結果を残すことができました。しかし来シーズンも同じようにうまくいくかというと、これは簡単なことではないと思います。当然、どのチームも広島対策をしてくるでしょう。来シーズンを戦う上では、天皇杯での甲府戦が一つの鍵になってくるのではないかと思います。
広島は最終ラインまで攻撃的に前に上がってくるプレースタイルで勝ち上がりましたが、裏を返せば、カウンター一発で点を取ることもできてしまいます。相手の“広島対策”に対して、今度はサンフレッチェがどう対応していくのか。その点が非常に大切になってくると思います。
正直なところ、今シーズンが始まるまでは、広島がここまでの素晴らしい結果を残すとは思ってもいませんでした。スキッベ監督の手腕には、本当に目を見張るものがあります。
天皇杯後には、「負けた後でどうやって立ち直るかが、サッカーにおいても人生においても重要だ」と伝えていたそうですが、哲学的でありながら、聞いている選手にとってもわかりやすく、胸に刺さる言葉が多いのもスキッベ監督の特徴だと思います。
試合後の円陣では、監督が「明日は休みだ」と伝えるシーンがよく取り上げられますが、試合後にオフが続くというのは通常であれば考えられない状況ですし、選手の立場からしても、コンディションの面で不安に感じるものなのです。しかし、スキッベ監督はそうしたシステムを取り入れましたし、選手たちも監督の期待に応えて結果を出してくれました。
これは、サッカーに対して真摯に向き合う選手が多いからこそできたことでもあると思っています。スキッベ監督は、勝利することはもちろん、『若手の育成』というクラブのオーダーにも見事に応え、さらに、若手だけでなくベテランの良さも存分に発揮させました。
これも、マツダ時代から続く広島というチームの素晴らしいDNAを、選手たちが脈々と受け継いでいるからこそ成し遂げることができた、大きな成長と躍進だったのだと思います。また、ユースの選手がチームの中心となって活躍している点も、『育成』を掲げるサンフレッチェの目指すべき姿です。
クラブが目指す姿を体現してくれたこと、そしてシーズンを通して僕たちをワクワクさせてくれたこと……。今シーズンは、黄金期の到来を感じさせる本当に幸せな1年間でした。
来シーズンも3つの大会で上位に立ち、きらきらした場所で喜んでいる選手たちの姿を、ぜひ見たいと思います。