早くも混戦の様相を見せている2023年J1リーグ。リーグ戦では5連勝、ルヴァン杯では1試合5得点など好調な戦いもありながら、5月には若きエースストライカーの負傷離脱という、衝撃的な1戦もあったサンフレッチェ広島。

 ここではサンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏に、好調のキーマン、印象に残ったゴールを熱く語ってもらった。

(データは全て5月8日の取材時点)

2-0とリードする展開でダメ押しの3点目を奪ったのは、今シーズンから『8』を背負う川村拓夢。

信じ続けた監督の期待に応えた、背番号8待望の今季初ゴール

 5月7日の福岡戦では、ついに川村拓夢に今シーズン初ゴールが生まれました。

 川村のゴールに至る流れは、GK・大迫敬介のプレーから始まっています。相手が放ったゴールを大迫がパンチングで弾き、それを受けた越道が縦にボールを出しました。そのボールを、相手を2人交わしながら川村が奪い、自陣からかなりの長距離をランニングしてゴール前へと運び、最後は得意の左足で決めました。これは川村のポテンシャルの高さ、スケールの大きさをよく表しているプレーだったと思います。

 これまでも、今シーズンもっとも得点の匂いを感じさせるのは川村だと話していましたが、なかなかゴールという成果には結びついていませんでした。それでもスキッベ監督は、川村を起用し続けてきました。これは、彼のポテンシャルを信じ、期待していたからに他なりません。そのなかでようやく結果が出たということは、川村本人としても、ホッとしたのではないでしょうか。

 あの試合の2点目は相手のオウンゴールでしたが、ここで注目したいのは、東俊希の高精度なFKです。

 東はここまで、サイド、ボランチと複数のポジションで起用されています。

 ポジションが変われば、選手としては『視界』が変わります。サイドでのプレーと中盤でのプレーでは見える視界も求められるものが異なるなか、臨機応変にしっかりと対応できている東の能力の高さ、そしてあの左足の精度の高さは本当に素晴らしいと思います。