Jリーグ2024シーズンの開幕戦を勝利で飾ったサンフレッチェ広島。エディオンピースウイング広島には2万7000人を超えるファン・サポーターが集まり、街なかにも賑わいが生まれるなど、早くも新たなランドマークとしての存在感を放っている。

 ここではサンフレッチェ広島を愛するOB・吉田安孝氏が語る、新スタジアムで迎えた2024シーズンへの期待、そしてクラブへの思いをお送りする。(記事中のデータはすべて2月2日の取材時点のもの、全3回・第3回)

試合日のみならず、多くの人々で賑わう『まちなかスタジアム』(提供 ©S.FC)

◆スタジアムの完成はゴールではなく〝はじまり〟。魅力的なサッカーで広島を魅了してほしい

 今シーズン、サンフレッチェ広島のもうひとつの注目ポイントとして挙げられるのが、エディオンピースウイング広島の〝スタンド〟です。

 例えば鹿島のホームであるカシマスタジアムや、浦和のホームである埼玉スタジアム2002は、スタンドに『KASHIMA』、『SAITAMA』といった地域名があしらわれています。一方エディオンピースウイング広島では、『HIROSHIMA』という地域名を、あえてスタンドには入れていません。これは、地域の名前を入れなくても、スタジアムを訪れて周りを見渡すだけで、広島という土地らしさを感じてもらえる工夫がなされているからなのです。

 スタジアムの脇には川が流れ、隣には広島城が見える。川沿いでは散歩をする人やランニングをする人がいて、広島の中心地を眺めることもできる。エディオンピースウイング広島に訪れ、そうした周りの風景を見ているだけで、広島を体感することができるのです。だからこそ、あえて地域名を表記せず、来場者に広島を肌で『感じて』もらいたいという思いが秘められているのだそうです。

 エディオンピースウイング広島は、座席のバリエーションにも、さまざまなこだわりがあることが話題になりました。音に過敏な人向けの『センサリールーム』や、子ども連れでも楽しめる『キッズルーム』も用意されています。トイレひとつをとっても動線が計算され、多様なバックグラウンドを持つ来場者に向けた細やかな配慮がなされています。そうした説明を受け、関わった方々の思いを聞いていると、サッカーを観戦する環境として素晴らしいことはもちろん、来場者にも優しい、まさに『日本一のスタジアム』だと感じられました。

 そして、スタジアムへの注目や期待が高まるほど、チームや選手への注目や期待も高まっていきます。それだけに、クラブの責任も重大だと言えるでしょう。たくさんのファン・サポーターに、スムーズに対応していくための仕組みづくりも大切になってきます。

 私自身、クラブOBのひとりとして、サンフレッチェ広島というクラブには、広島という土地の文化になってほしいと願っています。『まちなかスタジアム』が完成したことで、ここからサンフレッチェ広島が文化のひとつとなっていく。今シーズンは、そのスタートとなる1年だと感じています。新スタジアムの完成、開幕はゴールではなく、新しいスタートです。建設に携わった全員の思いを受け継いで、選手、クラブ全体で、サッカーファンと広島の人たちを楽しませるような、魅力的なサッカーを見せてもらいたいと思います。