2013年途中に来日し、14本塁打を記録。球団初のクライマックス・シリーズ進出に大きく貢献したキラ選手(写真右)。

 お笑い芸人として活躍中のザ・ギース尾関高文氏の本連載。これまでカープに在籍した歴代外国人選手を、時には厳しく、時には優しく、時にはユーモアを交えながら、尾関氏ならではの視点で紹介していきます。今回は2013年シーズン途中にカープに入団し、カープファンに衝撃をもたらした“あのハワイアン”について語っていただきます。

◆デビューから打ちまくるも守備では一抹の不安が……

 僕が初めてキラ・カアイフエを見たのは、デビュー3戦目。2013年7月11日の横浜スタジアムでした。前日まで2試合連続ホームランを記録していたキラ。『3試合連続ホームランなんてそんな贅沢は言わない、とにかくBクラスが続くカープが勝ってさえくれたら』。そんな風に心が弱っていた僕たちに勝利と衝撃をくれたのが、このキラでした。

 打った瞬間にただ者ではないと分かる凄まじい打球。あの時、現地で感じた興奮は今でも忘れられません。そしてこの試合で3号そして4号ホームランを打ったキラを見て、今年は何かが起こる予感を覚えたのでした。

 キラがカープに来たのは2013年。カープ人気に火が点きつつあり、黄金期を担う若い選手たちが躍動し始めた年でした。“ハワイからの刺客”というキャッチフレーズ。ほぼ“動く石像”のようないでたち。シーズン途中の加入でしたが、謎に満ち溢れたキラにどういう感情を持っていいのか分かりませんでした。『“カアイフエ”だから“可愛い笛”と覚えてね!』という球団の発表に、戸惑いを隠せないカープファンは多かったのではないでしょうか。

 しかしなんということでしょう。デビューから大爆発。打ちまくること、キラウエア火山のごとし。我々の心はすぐに鷲掴みにされました。そしてその後製作されたキラのグッズ『かわいい笛(ただの笛)」も前向きに受け止めることができました。

 キラが加入したカープ打線は明らかに破壊力が増します。エルドレッドとの『デスノート打線」という言葉こそ全く流行りませんでしたが、カープに今までにない勢いをもたらしました。まさに救世主。フォアボールもしっかり選び、出塁率も高い数字を残していました。ただ、守備に関してはなかなか我々をドキドキさせてくれました。基本的に『凪」とでもいうのでしょうか、平たくいうと全く動きませんでした。菊池選手が『キラの介護士」と呼ばれるほどに動き回っていたのが印象的です。以前菊池選手に聞いたところ、キラにボールが飛んだら「キク!キク!」と呼ばれ、全て処理したと苦笑いで言っておりました。