主にWBとしてピッチ上を自在に駆け回り、時に他ポジションでも結果を出し続ける東俊希。熾烈な首位を争いを繰り広げるサンフレッチェ広島において、存在感を増している。優勝争いを繰り広げる緊張感のなか、紫のレフティが追い求める景色とは。(全3回/第1回)

今季はここまでほぼ全ての試合で、主に左WBとして先発出場する東選手。

モチベーションが全く違う。1試合ごとに緊張感や責任感

—9月22日のJ1第31節・横浜FM戦(◯6−2)で今季リーグ戦初ゴールを決めました (83分の5点目)。

「さすがに無得点では終われないと思っていました。横浜FMとの相性も良いので(昨季のJ1第3節、2021年のJ1第2節でも得点)、取れてよかったです」

—チームは首位から2位に後退しましたが、優勝を争いながらシーズン最終盤に突入しています。

「2年前と昨季は3位でしたが、2年前はケガ(左下腿コンパートメント症候群)でシーズン途中から離脱していました。昨季は最終的に3位になりましたが、終盤でも7位や5位だったので、優勝を狙う感じではなく、あまり意識せずにプレーしていたんです。でも今季は途中から優勝を狙う状況になり、首位に立ちました。そうなるとモチベーションが全く違いますね。1試合ごとに、絶対に負けてはいけないという緊張感や責任感がありますし、その分、勝ったときの喜びも大きいです」

—現在の状況は、やはり燃えるものなのですね。2年前の本誌のインタビューでは『ここぞという場面での勝負強さは自分でも感じている』と話していました。

「大舞台や大事な試合では、緊張するよりも、お客さんがたくさん見に来ている中で活躍したらヒーローになれる、有名になれるぞ、という方向にメンタルを持っていきます。試合前は楽しみな気持ちになるので、良いプレーができるのだと思います」

—今季の序盤を振り返ると、開幕から11試合、昨季から数えると17試合無敗でしたが、引き分けが多く(今季の11試合は4勝7分け)、勝ち切れない状態でした。

「内容は良かっただけに、引き分けが続いたときは、無敗記録よりも勝てないことが気になりました。ただ、もちろん勝てれば良かったのですが、今季ほとんどの試合で自分たちのサッカーができていて、その結果として首位にいるので、決して悪かったわけではないと思っています」

—その後は7月から8月末にかけてリーグ戦7連勝を飾って首位に浮上しましたが、9月4日と8日のルヴァン杯で名古屋、11日の天皇杯でG大阪に敗れて敗退。短期間で2つのタイトルがなくなり、大きなショックを受けたのではないですか。

「ルヴァンカップ第2戦は延長前半の102分に直接FKを決めて、延長後半の106分に交代したときは、勝ったとまでは思いませんでしたが、すごく良い気分でした。112分に失点したときも、PK戦で勝てば問題ないと思っていましたが、負けてしまって……。すぐ天皇杯があったので気持ちを切り替えるしかなく、うまく切り替えることはできたと思うのですが、また負けてしまった。最悪の1週間で、さすがに落ち込みました」

—天皇杯の3日後には鹿島とのリーグ戦がありました。2−2の引き分けながら悪い流れを断ち切りましたが、切り替えるために当時、どんなことを意識しましたか。

「特別なことはしていません。落ち込んでも、寝たら回復するタイプなので。暑い中の過密日程でコンディションもチーム状態も良くなかったですが、それでも勝つために、やらなければいけなかったです」

—暑さの話が出ましたが、今年は特に暑い日が続きました。コンディショニングで、どんなことを意識していましたか。

「練習後や、オフの日もサウナに行って交代浴(お湯の風呂と水風呂に交互に入る)をしました。たくさん汗をかくので、その分、水分補給をしっかりすることも意識しましたね。しっかり水分を取るとケガの予防にもなると聞いたので、練習以外の時間でも意識して飲むようにしていました」

(第2回へ続く)