さて、かなり前置きが長くなってしまいましたが……話を本題に戻しましょう。今回、お話させていただくのは1986年の日本シリーズで、西武・秋山幸二さんが見せたバク宙ホームインです。

 1986年の日本シリーズは、山本浩二さんは引退を宣言されていたように記憶しています。第1戦で東尾修さんから放った同点ホームランは鮮明に覚えています。でも、浩二さんが引退されるということで、「もうプレーが見られなくなってしまう……」と思うと、幼い僕もすごく寂しい気持ちになりましたし、余計応援に力が入りましたよね。

 あのとき僕は小学4年生で9歳の頃でした。当時の日本シリーズは今と違って全試合デーゲームで行われていました。だから、平日だと当然日本シリーズを見ることなんてできません。ですがあの頃、広島の小学校では担任の先生が試合時間になると、あまり大きな声では言えませんが……教室のテレビをつけて「内緒だぞ」なんて言いながら、少しだけ日本シリーズを見せてくれることがあったんです。だからこそ、すごく思い出に残ってるかもしれないですね。なかなか学校で試合を見られるなんてありませんからね。とにかく、教室のテレビにかじりつくように必死で日本シリーズを見ていた思い出があります。

 そして、その日本シリーズで飛び出たプレーが、今回テーマとさせていただいた、西武・秋山幸二さんのバク宙ホームインです。もちろんカープファンですからカープを応援していましたが、子ども心として純粋に“ホームランを打って、バク宙でホームインする”という秋山さんの動きを見て……「うわ〜、すごいな! カッコイイな!」と。幼い僕には衝撃的な動きに映りました。