思わず心を奪われる! カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、新たなカープの魅力を切り取る。
今回は、現役ドラフトで日本ハムからカープへ移籍した、鈴木健矢投手の“アンダースロー”について、オギリマ視点でゆる~く取り上げる。
◆思わず手に取った、“ポストカード”
かねてより私は、カープの応援をするにあたり『箱推し』を標榜してきた。特定の選手に惹かれるというよりも、カープというチーム全体が好きで、応援したいからだ。
しかしそんな中でも何名か、『なんだか気になる』選手がいる。その一人が、現役ドラフトで日本ハムから移籍してきた鈴木健矢である。なぜ気になるかといえば、鈴木がアンダースローの投手だからだ。
体を沈み込ませるようにして腕を振り上げ、下から上に浮き上がるような球を投げるアンダースロー。その姿から『サブマリン』とも呼ばれるアンダースローは、オーバースローやスリークォーターの投手を見慣れた目にとても新鮮に映る。
もちろん過去にも山田久志(阪急)や、カープでも金城基泰など、アンダースローの名投手はいた。しかし数から言えば圧倒的に少数派であり、そのフォームとも相まって強烈な印象が残るのかもしれない(ちなみに私の印象に残る最初のアンダースロー投手は、元西武の“兄やん”こと松沼博久である)。
特に近年では、渡辺俊介(ロッテ)や牧田和久(西武、楽天)など、おもなアンダースロー投手の多くがパ・リーグに在籍していたというのも、『セ・リーグでアンダースローを見るのは珍しい』という印象につながっていたのだろう。
ただ、私がアンダースローに惹かれるのは、単に珍しいからというだけではない。そのフォームがとても美しく見えるからだ。川口和久も自身のコラム内で、アンダースロー投手について「合理性には欠けるが、極めれば、美しいフォーム」「同じ投手から見ても、ほれぼれするような、きれいなフォーム」と称賛している(※注1)。私もついつい、カープベースボールギャラリーで、鈴木のポストカードを2枚購入してしまった。
ところで、野球人生の最初からアンダースローで投げていたという選手はあまり聞かないように思う。多くが高校や大学時代でアンダースローに転向している。鈴木も日本ハムに入団して3年目に、新庄剛志監督からアンダースロー転向を勧められたという。
この『転向』がはまる人、はまらない人の違いはどこにあるのだろう。多くの人が指摘するのが『柔軟性』である。
川口もコラム内で、1970年代頃までの日本球界でアンダースロー投手が多かった理由として「文化的に畳や和式トイレの日本文化で育つと、自然と股関節が柔らかくなった」ことを挙げているし(※注2)、2020年までヤクルトで活躍したアンダースロー・山中浩史も、中学まで過ごした実家が和式便所で、「足首が柔らかいのはそのおかげかもしれない。効果はあるっちゃある」と語っていた(※注3)。
鈴木もテレビのインタビューで、背中に回した両肘がくっつくといった、肩甲骨周りの驚異的な柔らかさを披露している。こうした『柔らかさ』が、アンダースローでの成功をもたらしたと思われる。
移籍後、オープン戦でも好成績を残し、開幕一軍の座をつかんだ鈴木。気がつけば高橋礼(元ソフトバンク)は巨人に、中川颯(元オリックス)はDeNAにと、パ・リーグのアンダースロー投手が次々にセ・リーグに移籍している。今後セ・リーグ、そしてカープにアンダースローブームが来るだろうか。そんな期待を込めて鈴木の活躍を見守りたい。
※注1:川口和久WEBコラム「絶滅危惧種アンダースローを救え?」(週刊ベースボールONLINE・2020年5月14日)
※注2:川口和久WEBコラム「国際大会では『下町ロケット』が必要だ?」(週刊ベースボールONLINE・2019年11月13日)
※注3:「スポニチアネックス」2016年11月5日