静岡大から育成ドラフト3位でカープに入団した安竹俊喜。高校時代は控え捕手、1浪を経て進んだ静岡大では野球、学業、アルバイトに励んだ苦労人でもある。全力の努力を積み重ねてプロ入りをつかんだ、23歳のルーキーの言葉をお届けする。(全2回/第2回)
◆がむしゃらに、一つひとつの全力を積み重ねてつかんだドラフト指名
ー高校は地元の静岡高、その後は静岡大に進学されました。在学中はアルバイトと野球、学業を両立されていたとのことですが、苦労したことも多いのではないでしょうか。
「自分としては、みんなより大変な思いをしているという感覚はまったくありませんでした。そんなに苦ではなかったですね。もちろん、後々考えてみると関東や関西の強豪リーグの選手たちに比べれば野球以外に費やさなければならない時間も多かったので、その点では苦労したといえばそうなのかもしれません。ただ、やっている時には全然苦ではありませんでしたね」
ー野球に注力している選手たちに比べると、どうしても野球に費やす時間が減ってしまうわけですが、練習やトレーニングを積む上で何か工夫をしていたことはあるのですか?
「静岡大、カープでも1学年上の佐藤(啓介)選手はそういうのがすごく得意なタイプなのだと思うんですが、僕自身はあまり得意ではなくて……。とにかくがむしゃらに、ティーバッティングにしても、トレーニングにしても、ちゃんと力を出し切れるように、一つひとつの練習を全力でやろうと思っていました。力を入れるところと抜くところも必要になることはありますが、自分のタイプとして、8割でトレーニングをしていても伸びている実感がなかったので、常に全力でやらないといけないんだなと感じました。全力を出すということに重点をおきながらやっていました」
ー全力で取り組んできた大学時代ですが、特に印象的な試合や出来事はありますか?
「全国大会(全日本大学野球選手権大会)への出場を決めた、2022年の東海大会(東海地区の大学野球春季選手権大会 兼 全日本大学野球選手権大会代表決定戦)が印象に残っています。東海大会で優勝したチームが全国大会に進むことができるのですが、この大会は1日に2試合が行われます。静岡大は初戦で皇學館と対戦して、途中まで5対0で負けていたんです。正直、『もう無理かもしれない』という気持ちもあったのですが、5回で雨が降ってきて降雨ノーゲームになったんです。翌日に順延された試合では、0対5で静岡大が勝ちました。先発投手も8回まではノーヒットノーランでしたし、自分自身も、あの試合が大学在学中で一番うまくリードができた試合だったと思っています。その試合で僕は顔にデッドボールを受けて打撲してしまったのですが、医務室で治療した後で試合に復帰して、午後からの試合もマスクを被ったことを覚えています」
ーそれだけ大会にかける強い思いがあったのですね。
「はい。ちなみに2試合目の対戦相手は中京学院大で、その時の先発投手がいま同じカープの赤塚(健利)投手でした。当時から注目されていた投手だったので、周りからは『中京学院大が勝つだろう』と思われていたと思うのですが、2対1で勝利して8年ぶりに全国大会に進出することができました。あの2試合が自分のなかではすごく大きなターニングポイントだったと思います。そこで全国大会に出ることができなかったら、自分はスカウトの方の目にも留まらなかったと思いますし、今ここにいないだろうとも思います。あの東海大会があったからこそ、プロになれたと思っているので、あの日が一番印象に残っています。いま、佐藤選手や赤塚投手と同じユニホームを着ているのも、すごい縁だなと感じますね」
ーこのルーキーインタビューでは、“座右の銘”をお伺いしているのですが、安竹選手の“座右の銘”は何ですか?
「“前例は僕がつくれば良い”です。佐々木朗希(ドジャース)投手が以前言っていた言葉なのですが、自分にとってもすごく大切な言葉になっています。僕は高校でもレギュラーではありませんでしたし、野球推薦で大学に進学したわけでもありません。高校も大学も受験をして入学しているので、プロになる他の選手とは少し違う道を歩んできていると、自分では思っています。そういう道を歩んできた人でもプロ野球の世界で活躍できるということを示すことができればと思っているので、この言葉をこれからも大切にしていきたいです」
ー最後に、カープファンのみなさんにメッセージをお願いします。
「故障もあってまだ試合に出ることができていないので(4月3日現在)、まずは二軍の試合にたくさん出してもらえるような実力をつけていきたいです。そこでアピールをして、1年目に支配下選手に上がりたいと思っています。なるべく早く支配下登録を勝ち取って、一軍の舞台で捕手として試合に出るのが今の目標です。マツダ スタジアムで、カープファンのみなさんの大声援を受けながらプレーすることを目標に頑張るので、これからも熱いを応援をよろしくお願いします!」
■安竹俊喜(やすたけ・としき)
2001年4月17日生まれ・23歳
静岡県出身/右投右打/捕手
静岡高ー静岡大ー広島(2024年育成ドラフト3位)