ルヴァン杯プレーオフラウンドではPK戦のすえ劇的な勝利をつかみ、天皇杯2回戦も順調に勝ち上がると、6月22日の横浜FC戦では今季最多4得点をあげたサンフレッチェ広島。現在は首位・鹿島を勝点差5、得失点差3で追走中だ(6月27日時点)。ここではOB・吉田安孝氏が、波に乗る注目選手を解説する。(全2回/第1回)

2戦連続ゴールでチームを勝利へ導いた川辺

『らしさ』あふれる2戦連続ゴールはお見事!

 リーグ戦に加え、いよいよルヴァン杯、天皇杯も始まりました。今季も過密日程が予想されるサンフレッチェですが、ここまでは順当に勝ち上がることができています (6月27日時点)。

 ただ今季の試合を振り返ると、『得点の少なさ』はやはり気になるところです。守備の面ではGKを含め、チームとして非常によく機能していました。一方で、ボール奪取からの攻撃の組み立て、そしてフィニッシュに持ち込むシュートの数がこれまでに比べると少ないことが、なかなか得点を増やすことができていない要因の一つにあげられると思います。

 例えば5月31日の川崎F戦では、試合前半のシュート数はわずか3本でした。後半に入ってギアをあげるという戦い方もありますが、やはり前半から畳み掛けるような戦い方こそ、サンフレッチェの良さなのではないかと感じます。

 その点、5月25日のFC東京戦では、3−0というスコアはもちろん、内容でも久しぶりにサンフレッチェらしさが出た試合だったのではないでしょうか。4連敗したあとにそのまま崩れることなく、5連勝と盛り返すことができたのも大きかったと思います。苦しいなりに勝ち切り、勝点を積むことができたのは、ここからの戦いにとっても非常に重要なポイントになってくるでしょう。

 この連勝を支えたキーマンを一人あげるなら、やはり川辺駿です。

 東京V戦(5月17日、◯2−1)とFC東京戦では、いずれも試合終了間際にゴールを決めました。東京V戦は決勝弾、FC東京戦では加藤陸次樹がPKを失敗した嫌な流れを断ち切る一発となりました。苦しい時間帯、苦しい局面でゴールを決める。まさに川辺駿 『らしさ』 が出た豪快なシュートだったと思います。そしてあの2戦は、シュートだけでなく、中盤から相手の裏をつく縦パスなど、随所に川辺らしさが出ていたと感じました。

 得点力が課題と言われる今のチーム状況において、ボランチの存在は非常に重要です。ファン・サポーターはやはり前線の選手に得点を期待しますが、ここ数年の点が取れていた試合では、3列目からの飛び出しから得点につながるシーンがよく見られました。

 相手のマークがつきにくい中盤の底から相手のボックス内に入っていくという動きが増えてくれば、さらにチャンスをつくり出すことができると思いますし、シュートも増え、おのずと得点力も上がってくるのではないでしょうか。

(後編へ続く)