一進一退の戦いが続き、レギュラーシーズンの約半分を消化した現在もなおBクラスから抜け出せず、苦戦している佐々岡カープ。

 今季未だ勝ち星なしに終わるK.ジョンソンや、現在二軍で調整中の床田寛樹など、首脳陣の計算を大きく狂わせる誤算があった一方で、エース大瀬良大地が徐々に本来の投球を取り戻し、開幕こそ二軍で迎えた野村祐輔は一軍復帰後は安定感ある投球を続けている。さらに新戦力であるルーキー森下暢仁はここまで5勝をマークするなど、期待通りの活躍を見せ、逆襲へ向けて先発投手陣の駒は徐々に揃いつつある。

 今回はカープOBの大野豊氏に、これから後半戦の戦いの鍵となる先発投手たちについて語ってもらった。

一度ローテーションを外れたが、チームトップタイの勝ち星を記録している大瀬良投手。

◆復調した野村の活躍に期待

 開幕から先発ローテーションで投げてきた投手たちの調子が安定しないのは苦しいところですが、それでもこれからの上がり目がないわけではありません。

 たとえばキャンプ中に故障し、開幕に間に合わなかった野村の復帰は非常に大きいと思います。今季初登板の試合となった7月22日の阪神戦で6回1失点と上々の投球を見せると、7月29日の中日戦で8回無失点と素晴らしい投球を披露しました。停滞していた先発投手陣の雰囲気を払拭する、力強い姿をマウンドで見せてくれました。

 今季の投球を見る限り彼本来の武器である両サイドを使った投球、そして球の投げ分けがしっかりとできています。何より点を失っても、そこで崩れてビッグイニングをつくるのではなく、粘り強く最少失点で抑えることができているのが、彼が本来の投球を取り戻しつつあることの証明でしょう。試合のつくりかたを知っている投手なだけに、野村の復活はカープ投手陣にとって大きな追い風です。

 そして一度ローテから外れはしましたが、大瀬良も開幕から2試合連続で完投勝利を挙げるなど、エースらしい素晴らしい投球を見せてくれました。開幕当初からリリーフ陣が不安定だっただけに、大瀬良の2完投の意義は今振り返ってみても、非常に大きかったと思います。ただ大瀬良自身、一度登録を抹消されるなど、決して万全な状態ではありません。

 先発陣では最も安定した投球を見せている大瀬良が長期離脱となると、チームとして非常に苦しい戦いを強いられるだけに、首脳陣もバランスを見ながら完投させるか否かを見極めていってほしいところです。幸い勝ちパターンがある程度形になりつつあるので、大瀬良だけに負担がかかることは避けてほしいです。

 最後に森下も開幕から順調に勝ち星を伸ばしているだけに、このままシーズン終了まで投げ続けることができれば、チームにとっては大きな戦力になるはずです。しかし気になるのは、毎回の試合で若干球数が多いことです。一見制球力が高いように見えますが、意外とはっきりボールと分かっていまうような投球もあり、そうした球を少しでもなくすことが今後の活躍の鍵を握るでしょう。

 特にルーキーにありがちなのが、疲れがたまる夏場以降に急に勝てなくなること。やはり1試合の球数が多くなると、それだけ目に見えない疲れがたまってきます。捕手との共同作業にはなりますが、今後のことを考えると球数を少しでも減らした上で相手打者を抑えていく取り組みが求められてきます。