いよいよリーグ最終戦を迎えるサンフレッチェ広島。今季は4シーズン目を迎えたスキッベ監督のもと、2022年以来となるルヴァン杯タイトルも獲得した。監督、コーチ陣、選手、クラブ……そしてサポーターと街が一体となり戦った2025シーズンを、クラブOB・クラブOB・吉田安孝氏が振り返る。(全2回/第2回)

クラブに二度のカップタイトルをもたらしたスキッベ監督は、今シーズン限りでの広島退団が発表された

◆街全体の後押しは、きっと選手たちも感じているはず

 今シーズンのチームにとっても、塩谷司、佐々木翔の両ベテランは非常に大きな存在でした。

 特に塩谷は、これまでクラブが獲得してきた5つのタイトルすべてを経験した、まさに『優勝請負人』です。クラブの良い時も、苦しい時も見てきた塩谷は、タイトルを獲る難しさをよくわかっているはずです。経験値もあり、自ら周囲に働きかけることのできるベテランがいることは、チームにとって非常に大きなプラスです。

 ジャーメイン良が「自分がタイトルを獲りたいと思っていたけれど、塩谷選手や佐々木選手にタイトルを獲らせたいと思うようになった」と話していましたが、これはベテラン選手の言葉や行動を間近で見てきたからこそ出てきた思いなのでしょう。

 また、個々の選手の能力に頼るだけでなく、戦術の熟練度が増してきたのも今のサンフレッチェの強さのひとつの要因でしょう。勝った試合はもちろん、負けてしまった試合も含め、一戦一戦を重ねるごとに『どうすれば勝てるのか』を、サブメンバー、ベンチ外メンバーを含め一人ひとりが深く理解しているのだと思います。

 ルヴァン杯決勝までにプレーオフラウンド、プライムラウンドの6試合を戦ってきましたが、特にキーとなった試合をあげるとすれば、プレーオフラウンド第2戦(福岡)とプライムラウンド準決勝・第2戦(横浜FC、いずれもエディオンピースウイング広島)でしょう。どちらも第1戦を落とし、負けられない状態でホームに戻ってきました。日程の巡り合わせもあり、2戦目をホームで戦えたことは選手にとっても非常に大きかったと思います。

 特に10月12日のプライムラウンド準決勝・第2戦は、サンフレッチェが主として開催するカップ戦において、クラブ初となる全席種完売(ビジター・リセール分を除く)を達成しました。そうした街全体の後押しを選手たちも感じているはずですし、大きな力になっていることは間違いありません。広島ビッグアーチ(現在のホットスタッフフィールド広島)時代、空席の目立っていた頃を知っているファン・サポーターにとっては感慨深いものがあるのではないでしょうか。

 新スタジアムになって2シーズン、そしてスキッベ監督が指揮を執って4年目のシーズン。サンフレッチェへの注目が高まった結果、観客と収益も増え、選手補強にも力を入れることができるようになりました。何よりも、他クラブの選手たちから『サンフレッチェでサッカーがしたい』と思ってもらえるクラブになれていることをうれしく感じています。

 今シーズンも残すところわずかとなりましたが、2月にはAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)の試合も開催されます。まだまだ厳しい戦いは続きますが、引き続き、熱く応援していきたいと思います。