カープが誇る『不動の1番・ショート』として3連覇に大きく貢献し、グラウンド外でもチームをけん引してきた田中広輔。2025年シーズン限りでカープを退団した田中が、現役生活に終止符を打つ決断をした。

 ここでは、昨年カープ退団直後の独占インタビューをお送りする。常に勝ちにこだわり、ストイックに野球と向き合い続けた背番号2が歩んだこれまでの軌跡と、チームへの深い感謝とは。(全2回/第2回)

『感謝』の言葉を記した色紙を手に、笑顔を見せる田中広輔(撮影は2025年11月)

◆どんな状況でも声援に応えるのがプロ

─2019年以降は膝の手術や故障などがあり、苦しいシーズンが続きました。この数年は、野球選手としてどんな期間でしたか?

 「苦しい期間が続いたというか、僕の場合は、それが後半に来たというだけだと思っています。やはりプロに入って最初から出鼻をくじかれて、そこから活躍する選手もいれば、最初から最後までケガで終わってしまう方もいます。僕の場合はありがたいことに最初に良い結果が出て、あとにその時期が来たという感覚なのかなと思っています。ちょうど良いと言うか、しなくてもいい経験ではあるのですが、野球人として、人として、いろんな意味で良い経験をしたかなとは思っています」

─若い頃は当然体も元気だったと思いますが、ケアに対する意識が変わりましたか?

 「ケアに関しては元々していたのですが、やはり自分の中でもどこか痛くても我慢してやっていた部分はありました。やはりそうでないとこの世界では生きていけないと思っていたので、ケアはやりながらも、ちゃんと見てもらうところは見てもらわなければならないという感じですね」

─若手と接する機会が多くなったことで、新たに気づかされたこと、学んだことはありますか?

 「伝え方ですかね。僕が思っていることを感覚で言っても、やっぱり僕の感覚であって、特に経験をまだしてきていない選手には、できないことがたくさんある中で、それをどうやって伝えたらいいかというのを考えながら、言葉も選びながらやっていましたね。『昔は』とか『やっぱり今は』『俺らの時は』というのは、死語なわけで、そういうことはなるべく言わないように心がけていました」

─主力として3連覇を達成した経験というのは、野球選手としてどんな意味を持つ経験だったと思いますか?

 「一生懸命みんなでやってきて、努力してきたことが間違いではなかったという証明ができた。そういう努力がチームとして報われた瞬間なので、学んだというかやってきたことが少なからずは間違っていなかったんだなという自信を得ることができた瞬間でした。また勝ちを知ると、最低のラインがやはり上がります。だから若い選手には知ってほしいというのはもちろんあります。取り組み方が本当に変わると思います」

─これまでさまざまな素晴らしい記録を残されてきましたが、誇れる数字やタイトルは何でしょうか。

 「誇れる数字は、やっぱり試合に出続けたことです。タイトルはそのおまけみたいなものだと思っています。ただ、2018年にゴールデングラブ賞を取れたときはうれしかったですね。それを目標にしていましたし、ショートには不動の坂本勇人(巨人)さんがいらっしゃった中で受賞できたということは自分にとっても大きかったですね」

─635試合連続フルイニング出場という記録については、どんな気持ちを持たれていますか?

 「辛い事はありましたけど、レギュラーは試合に出て当たり前、最後まで試合を完結させる、そこまでがレギュラーという考えがあったので、それに対して大変なのは当たり前という感情ですかね」

─この12年間で忘れられない試合、一打など印象に残っている場面を聞かせてください。

 「やはり、フルイニングが途切れた試合が一番印象に残っています(2019年6月20日マツダ スタジアムでのロッテ戦)。あのときは結果も出ていなかったですし、あの時は膝も限界でした。ただそれを言い訳にはしたくなかったので……。ケガをしていても結果を出せる人もいるわけですから、そこは僕の技術不足だなと。何かもっとやれることがあったんじゃないかなと思っていました」

─カープファンのみなさんはどんな存在であったか、聞かせてください。

 「本当に毎回『頑張らなければ、結果を出さなければ』と思わせてくれる存在でした。スタンドを埋めて声援をもらっている中で、いかに喜んでもらうかというのは必須条件かなと思います。そのために必死に練習をしました。負けてしまったり、結果が出ないと、応援に来てもらえません。でもそれが全てなので、やはり若い選手たちも何かを感じてくれないと。当たり前じゃないですし、今シーズンの後半は、スタジアムの風景を見て僕も悲しかったですもんね。コロナ禍より少ないんじゃないのかなと思っていました」

─満員の時を経験されているだけあり、やっぱり寂しさを感じられていたんですね。

 「これがプロ野球じゃないぞっていうのは感じてほしいですね。満員の声援の中で一喜一憂しながらやる、どんな状況でもそれに応えるのがプロです。頑張れた要因をつくってくれたのはファンのみなさんなので、感謝しています」

■田中広輔(たなか・こうすけ)
1989年7月3日生、神奈川県出身。東海大相模高-東海大-JR東日本-広島(2013年ドラフト3位)。プロ1年目から一軍で結果を残すと、2015年からショートのレギュラーに定着。2016年から1番に固定され、2番・菊池涼介、3番・丸佳浩(現巨人)の同学年3人で「タナキクマル」トリオとして活躍。2017年に盗塁王、最高出塁率、2018年にゴールデングラブ賞を獲得。2015年から2019年6月まで635試合連続フルイニング出場。2025年限りで現役引退。