守備固めや代走の切り札としてチームに欠かせない存在である上本崇司が、今季は打撃面でも存在感を示している。振り返れば2月、春季キャンプから結果を残し、周囲に『今年は一味違う』という印象を植え付けた。

春先から課題の打撃面で猛アピールを続けている上本崇司選手。

 その後の練習試合でも安打を重ねて打撃面で必死のアピールを続けてきた。今季初安打は初スタメンとなった7月4日の阪神戦。その後もスタメン機会を増やし、9月25日時点でスタメン起用は10試合。昨季までのスタメン試合を上回っている。

 8月28日の阪神戦ではチーム今季初のサヨナラ勝利を決める劇的なサヨナラ打を放つなど、攻守においてこれまでとは違った活躍を見せている。プロ8年目にしてキャリアハイの数字を更新し続ける上本の、今季にかける思いを振り返る。

◆いつクビになっても後悔のないように、という思いで今季は臨みました

─ プロ8年目を迎える2020年シーズンですが、ご自身の中でどのような決意をもってシーズンに臨みましたか?

「そうですね、今年で大卒8年目で、年齢も30歳になります。大袈裟な言い方かもしれないですけど、いつクビになっても後悔のないように、先もそう長くない、という思いで臨みましたし、今もそういう思いで日々取り組んでいます」

─ 今シーズンはこれまでの通算安打数に迫る数字を残されています。打撃面において進歩を感じている点、考え方を教えてください。

「自分としてはそこまで結果が出ているとは正直思わないですね。ですが今年に関してはキャンプが始まってから打席に立たせていただく機会がすごく多くなったので、一番はそういうモチベーションも高く持てている部分ですね。打席に立った以上は結果を残さなければならないので、常に準備はしっかりしているつもりです。これまでもそうでしたが、一打席に対する思い、集中力もそうですし、打撃練習から熱を入れてやっています」

─ 8月28日の阪神戦(マツダスタジアム)ではプロ初のサヨナラヒットを放ちました。どのような思いで打席に立たれていたのでしょうか?

「それまでもミスが続いていたんですけど、サヨナラ安打を打てた試合も9回の守備で暴投するミスをしていました。なので、『とにかく少しでも取り返したい』という気持ちだけでしたし、『ここしかない』という思いで打席に立っていました」

 9回1死一、二塁のチャンスで打席を迎え、見事にプロ入り初となるサヨナラ打を放った上本。勝利の直後にはグラウンド上で歓喜の輪が広がり、プロ8年目の苦労人は人目をはばかることなく涙を流した。脇役として過ごしてきた経験を力に変えて、背番号0は今後もチームのために全力を尽くしていく。