今季のカープでは多くの若手選手が一軍デビューを果たし、それぞれのポジションで持ち味を発揮している。

ドラフト9巡目入団ながらも、カープの主力として活躍した天谷宗一郎氏。

 目立つのは中村奨成や森下暢仁などドラフト1位組だけではなく、下位指名の選手たちの躍進。今季だけで桒原樹(2014年、5位)、正隨優弥(2018年、6位)、羽月隆太郎(2018年、7位)、大盛穂(2018年、育成1位)が一軍初昇格を果たしている。

 はたして下位指名の選手が、この先も生き残るためには何が必要なのか? カープ入団時はドラフト9巡目ながら、現役時代を通して印象深い活躍を見せたOB・天谷宗一郎氏が自身の経験も踏まえて“下位指名選手の戦い方”を語る。

◆カープという球団は下位指名選手が結果を残す土壌がつくられている

 自分は2001年ドラフト9巡目でカープから指名されたことで、プロ野球選手としての道が開きました。ドラフトに指名されたとはいえ、9巡目というのは決して高い順位ではありません。

 ただ、自分の場合はとにかくプロの球団から指名されたことがうれしかったですし、“なんとか網に引っかかった”という思いも同時にありました。何故かというと、プロで指名されるためには実力と同じくらい“運”も必要だと思うからです。

 それはチームの状況、つまり選手の年齢分布や、補強ポイントが自分の特長と合致するかどうかという意味での“運”です。自分と同じようなタイプはプロに入ればごまんといるわけで、自分がプロに入ることができたのは運も関係していたのだと思っています。

 よく聞かれる、『上位指名選手に対してのライバル心』ですが、自分の場合そこまで明確なライバル意識はありませんでした。自分と同期のドラフト1位は投手である大竹寛(現巨人)でしたし、ドラフト2位以下の選手を見ても、外野手は一人もおらず、自分が試合に出場する上でのライバルとは思いませんでした。

 そういう意味で言うと、今シーズン一軍デビューを果たした羽月隆太郎選手や、大盛穂選手は自分とは状況が違うだけに、上位選手に対する思いも異なるかもしれないですね。羽月選手で言えば、ドラフト1位で同じ内野手の小園海斗選手がいますし、育成出身の大盛選手は同じ大卒選手で正隨優弥選手がいます。『意識するな』というのが難しい話だと思います。

 自分は他球団を経験していないので、あくまでもカープでの経験談ですが、ドラフトの上位指名選手と下位指名選手で与えられるチャンスの回数が違うというものはありませんでした。

 当然、指名直後のメディアへの出演回数などは、圧倒的に上位選手が上ですが、野球の練習や試合に関しては監督やコーチからは横一線に見てもらえる感覚がありました。叩き上げの選手が多いというのは伝統ですし、カープという球団は下位指名選手が結果を残す土壌がつくられているのかもしれません。