カープを実況し続けて20年。広島アスリートマガジンでも『⾚ヘル注⽬の男たち』を連載中の坂上俊次⽒(中国放送アナウンサー)による完全書き下ろしコラムを掲載! ⻑年カープを取材してきた坂上⽒が、カープの育成⽅法、そして脈々と受け継がれるカープ野球の真髄を解き明かします。連載7 回⽬の今回は、長年カープを暖かな眼差しで見守る安仁屋宗八氏に迫ります。

愛する球団のOBとして、叱咤激励を送り続ける安仁屋宗八氏。

 愛するチームが苦しい戦いを強いられている。それだけに、『世界一のカープファン』を自認する男の声は弾まない。しかし、カープを思うからこそ、提言の声をトーンダウンさせることはない。先発ではルーキーの森下暢仁が大車輪の活躍を見せる。リリーバーでは、島内颯太郎やケムナ誠、さらには塹江敦哉など若鯉の台頭がある。軒並み150キロを超える快速球で真っ向勝負を挑む姿には、76歳のOB会長も目じりを下げる。

 それだけに、選手たちにもっと輝いて欲しいのである。先発したら完投する気持ちでいて欲しい。リリーフ登板ならば、“1イニング限定”と決めつけず、貪欲に次のイニングに挑む気持ちであって欲しいのだ。

 時代の変化とともに、投手起用法は大きく変わっている。一概に先発完投を美化できなければ、球数制限ばかりに視点を置くこともできない。ただ、1960~70年代前半の苦しい時代に腕を振った安仁屋の言葉は、傾聴に値する魂が込められている。

「『細く長い野球人生を』という人もいるが、細くやれば長くやれるという保証はない。だから、ワシはそういう言葉が嫌い。野球は、接触プレーもあればボールが当たることもある。何が起こるかわからない。だから、勝てるときに勝っておいて欲しいと思う。投げられるときに投げ、走れるうちに走ること。その結果として、一日でも長く選手にユニフォームを着てもらえればと思います」