各球団スカウトの情報収集の集大成であり、球団の方針による独自性も垣間見られるドラフト会議。カープはこれまで、数々の名スカウトたちが独自の眼力で多くの逸材を発掘してきた。

 ここでは、かつてカープのスカウトとして長年活躍してきた故・備前喜夫氏がカープレジェンドたちの獲得秘話を語っていた、広島アスリートマガジン2003年創刊当時の連載『コイが生まれた日』を再編集して掲載する。

 今回は1989年ドラフトでカープが1位指名し、先発100勝100セーブの大記録を達成した佐々岡真司(現カープ監督)の獲得秘話をお送りする。

史上2人目の先発100勝100Sを記録するなど、役割問わず活躍した佐々岡真司。現在はカープ一軍監督を務めている。

◆単独指名に成功した「4年越しの恋人」

 佐々岡は学年では佐々木主浩(元横浜など)や桑田真澄(元巨人など)、清原和博(元巨人など)と同じです。甲子園で活躍した彼らとは違って、彼は目立った戦績はありません。ただ「浜田(島根県)にすごい球を投げる高校生がいる」という話は私達も当然知っていて、広島から近い事もあり最初はチーフだった私が自ら担当しました。登板しない日にはショートも守り、バッティングも3、4番を打つなど素晴らしいものがありました。