シーズン前からカープの課題となっていたのがリリーフ陣の再構築だ。後半戦に入り一定の形は見え始めたものの、勝利の方程式と呼ぶにはまだ時期尚早という段階だ。引き続き再構築が求められるリリーフ陣の現状を、カープOBの大野豊氏が分析する。

やや疲れも見られる塹江投手だが、目標の一つでもあったシーズン完走も見えてきた。

◆若手投手にとっては実りあるシーズンとなっているが・・・

 大瀬良大地、K.ジョンソンという先発の二枚看板が離脱するなど、今年のカープはシーズンを通じて投手陣の不調が目立ちました。先発だけではなくリリーフ陣も、開幕前の想定とはかなり違った形となっています。

 シーズン最終盤を戦う中で、リリーフ陣については、ケムナ誠、塹江敦哉、フランスアというところで、ある程度メドが立った印象はあります。リーグ3連覇当時とは顔ぶれが違いますが、若い投手が台頭してくるのは決して悪いことではありません。

 ただ、塹江にしてもケムナにしても1年間、フルで投げ切った経験がないわけです。その2人が勝ち試合の後ろを任されているというのが、現在のカープリリーフ陣の苦しさを物語っていると言えるでしょう。今年は新型コロナウイルスの関係でベンチ入りの枠が増えていますが、ではその中で勝ちパターンに入っている投手が何人いるのか? そこが首脳陣にとって悩みの種なんです。

 塹江やケムナは回またぎや、勝ち試合でないときの登板も見受けられます。ベンチ入りできる投手が増えているにも関わらず、この2人を使わざるを得ないというのは問題です。状態が良い投手であっても、連投を続ければ当然疲れもたまってきます。両者にとっては非常に良い経験となっていますが、その一方でとにかく故障には注意してほしいと思っています。

 2人以外では今年は島内颯太郎も存在感を見せていましたが、登板を続ける中で打ち込まれる試合も増えていきました。今季まだ一軍登板のない岡田明丈もそうですが、あれだけ素晴らしい球を投げながら、打ち込まれるケースがあるということは、やはり制球力というところが一番の課題になっているということです。直球の質は文句なしですけど、投げてみないと分からないという直球を投げている段階では、セットアッパーや抑えとしては不安が残ります。

 リリーフの再構築が今季のテーマの一つでもあったわけですから、若い投手はこれまの経験を無駄にすることなく最後までしっかりと腕を振り続けて、首脳陣の信頼を勝ち取ってほしいですね。