佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。今回は高卒3年目の中村奨成が初打席に立った7月26日のDeNA戦(横浜スタジアム)を振り返る。

7月26日のDeNA戦。高卒3年目・中村奨成選手が代打で登場しプロ初打席に。初安打は出なかったが、期待の若手捕手がようやく一軍の舞台に立った。

◆二軍で結果を出して勝ち取った一軍切符。貴重な経験を来季へ!

 広島育ちで広陵高校出身。甲子園1大会の本塁打記録となる6本塁打をマークした中村奨成。周囲の期待も大きい2017年のドラフト1位が、2020年、ようやく一軍の舞台に立った。

 初の一軍昇格が決まったのは7月25日のことだった。「急に言われたので、びっくりしました。うれしい気持ちと驚く気持ちとそれぞれがありました」。今季は開幕から好調をキープ。昇格当時はウエスタン・リーグの首位打者を快走するなど、周囲も納得の初昇格だった。

 そして迎えた7月26日のDeNA戦。6点ビハインドの7回、2死から田中広輔が安打で出塁したところで、薮田和樹の代打としてプロ初打席に立った。

 初対戦の相手はプロ7年目の平良拳太郎。初球は思い切りスイングするも空振り。2球目も積極的に振っていくもファールとなり2ストライク。そして追い込まれてからの3球目。初球と同じような軌道の球を打ちにいくも打球は投手のもとに。投手ゴロとなり、惜しくも快音は響かなかった。しかし、3球すべてバットを振りにいく積極性、凡打になるも一塁まで全力疾走。二軍から這い上がってきた若鯉の全力プレーにカープファンはおおいに沸いた。

 そして直後の8回、そして9回に5点ずつを奪い、終盤2イニングで合計10点を奪取。6点差をひっくり返す大逆転勝利となった。最後は正捕手・會澤翼が豪快な満塁弾。劇的な逆転勝利に酔いしれた一夜となった。

「一軍の投手と対戦する中でも、決して甘い球がこないわけではありませんでした。ただその確率が少ないことは理解できましたし、1球で仕留める力がまだまだ足りないなと思いました。一軍で4打席も立たせてもらいましたが、結果は出せませんでした。そこで打てなかったということは、まだまだ自分の実力が足りなかったということです」

 今シーズン、一軍メンバーに名を連ねたのは1ヶ月にも満たず、与えられた打席は4打席。惜しくも初ヒットは生まれなかったが、自身の課題を明確にできた点も含めて貴重な経験となったはずだ。

 「やっと野球選手としての一歩を踏み出すことができたと思いますし、来季につながるシーズンを過ごせたと思います」

 カープファンから大きな期待を背負う背番号22は、きっと、この経験を糧に大きく成長を遂げてくれるはずだ。