2020年シーズンを持って現役引退を決断した佐藤寿人(ジェフユナイテッド千葉)。J1歴代2位のゴール数を記録した“ストライカー”は、かつてサンフレッチェ広島に12シーズン在籍した。ここでは、『広島アスリートマガジン』誌上に掲載された数々のインタビューから厳選し、佐藤寿人のサッカー人生を本人の言葉と共に振り返っていく。

 今回は2013年1月号のインタビューをピックアップ。史上10人目となるJ1リーグ通算100得点。史上4人目となるJ1・J2通算150得点。Jリーグ史上初となる9年連続2桁得点を達成するなど、圧倒的な存在感でサンフレッチェを初優勝に導いた佐藤の2012年シーズンを振り返る。

22得点を記録し、初の得点王に輝いた佐藤寿人選手。

◆『優勝ってこんなにすごいことなんだ』と

— 改めて優勝おめでとうございます。この1カ月でかなりの数の取材を受けたのではないですか?

「こんなことはかつてなかったですね。もう一生分やりつくした感じですよ(苦笑)。優勝が決まって数日の間に、1年分やった気がします」

— 周囲の盛り上がりで優勝を実感するのではないですか?

「僕たちもサポーターのみなさんも待ち望んでいた分だけ喜びは大きいですし反響はありますね。先日車を運転していたら、対向車に乗っている人が僕に気付いて助手席の人が窓を開けてガッツポーズしてきたんですよ。他にも優勝を決めた数日後に洗車に行ったら、『今回はお代はいいですから』って言われたこともありました。ありがたく好意を受けさせてもらいましたけど、今までだったらそんなことなかったですもんね。『それだけ喜んでもらえたんだな』と思いましたし、『優勝ってこんなにすごいことなんだ』とひしひしと感じています」

— 12月3日に行われたJリーグアウォーズではMVP、得点王、優秀選手賞、フェアプレー個人賞と史上初の4冠に輝きました。選手全員で立ったアウォーズの舞台はいかがでしたか?

「もう鳥肌が立ちました。僕だけではなくみんながこの瞬間を待ちわびていましたし最高の瞬間でした。試合に出ていた選手だけでなし得た優勝ではなく、監督を始めスタッフ、フロント、サンフレッチェに関わる全ての人の力で勝ち取った物です。優勝を決めたときの喜びも非常に大きかったですけど、出ている選手、出られなかった選手も含めて、みんなでタキシードを着てアウォーズの壇上に上がれたことはまた違った喜びがありました」

— 時間は経ちましたが、改めて11月24日の第33節C大阪戦で優勝が決まった瞬間はどんな気持ちでしたか?

「決まった瞬間は『本当に優勝したんだな』という思いで、何というかうれしさを通り越していました。苦しかったときの思い出や、サポーターのみなさんの姿が浮かんできました。でもあの試合で優勝できるとは思っていなかったので、あの結果はできすぎですよ」

— 試合後には『ここまで長かった』とお話しされていましたが、2005年の移籍からいろいろなことがありましたね。

「長かったですね。これまでカップ戦の決勝に進出したり、ACLに出場することはありましたが、本当の意味で目に見える結果を残せたかと言えばそうではありませんでしたから」