◆広島という街に恩返ししたい

— 周りとはどういった会話をしたのですか?

「森保監督には『正直めちゃくちゃプレッシャーを感じているんですよ』って言いました。そしたら『まあそうだよな。こんなチャンスだったら、そりゃ感じるのが普通だよな』って言われて、それから森保監督が声を掛けてくれる度に少しずつ気が楽になっていきました。チームメートには『どう? プレッシャーある? 』って結構聞いて回ったんです。でも『あるけど、でも…』っていう反応で『みんなそんな感じなのか』って拍子抜けしました。『おれはこんなに感じているのに、なんだよ! 』って(苦笑)」

— 優勝が決まった瞬間にピッチに崩れ落ちたのはそういったことがあったからなのですね。

「優勝が決まったときはそういった気持ちから解放されました。『ああ苦しかったぁ~』って感じでしたから。うれしいという気持ちもものすごくありましたけど、ほっとしたという気持ちの方が強かったですね」

— 寿人選手にとってサンフレッチェで優勝したことには、どのような意味があるのでしょうか? 

「広島に来て本当にいろいろなことを学ぶことができました。選手としてこれまでたくさんの喜びをサポーターのみなさんに与えることができたかというと、そこは自信を持って言うことはできません。一番はチームが勝つことで、みんなが喜べる。その瞬間を1つでも多くつくっていくことが、僕らプロサッカー選手の役目でその最大が優勝です。勝つだけじゃなくて、優勝する、カップを掲げるといった手放しで喜べる瞬間はこれまでなかったですし、サンフレッチェに呼んでもらったからこそ、この広島という街に結果をもたらしたいというのは、自分の中でモチベーションになっていました。恩返ししたいという思いは強くありますし、この優勝をきっかけにこれからもっと地元に愛されるクラブにならないといけないと思います」

— この優勝がサンフレッチェ、そして広島の街にとっても1つのターニングポイントになるということですね。

「そういう意味では子どもたちが大きな夢を持てるというところに繋がってくると思うんです。たとえば子どもに『どこを応援してるの』って聞いたときに『サンフレッチェを応援してる。サンフレッチェが好きだよ』って胸を張って言ってもらいたいじゃないですか。今までは『でもサンフレッチェあんまり強くないじゃん』と言われていたと思うんです。今回の優勝で『サンフレッチェ強いじゃん』って、子どもたちが胸を張って言える大きなきっかけになったと思います」

— 2008年の昇格を決めた試合後に「J1にサンフレッチェ旋風を巻き起こします」と言うところを、「街おこします」と噛んだことが話題となりました。今回の優勝で旋風を巻き起こして、街おこしもしたことになりましたね。

「ダブルで達成できましたよね。2つが繋がったので結果的にあのとき噛んどいて良かったです(苦笑)」

— 来季は念願のユニホームに星を付けて戦うことになります。

「やっぱり1個でも星が付くことは大きいですよね。ここぞとばかりにめちゃくちゃ大きいのを付けてもらおうと思っています」

(広島アスリートマガジン2013年1月号掲載・表記、所属等は当時のまま)