◆帰る場所を見つけたことで生まれた落ち着き

 新井氏は今年2月に取材で訪れたオープン戦後、堂林の悩みに対し「バットの角度をギリギリまでキープして最後に回転すること。そこをもう少し意識してみろ」とアドバイスを送った。新井氏は、2020年序盤の堂林について、こう語っていた。

「今年の堂林を見ていると“何か”をつかみ始めています。その何かとは“帰る場所”です。開幕から良い数字を残していますが、まず見送り方が良く、凡打の内容が以前と違います。これが好調の要因でしょうね」

 2月のキャンプ時点でスイング時の体の開きに悩んでいた堂林は、新井の助言を胸に鍛錬を重ねた。

「少しでも悪くなったらそこに戻って極端に意識して練習しています。今は悪くなったら戻れるところがあるので、自分の中では大きいと思います」

 シーズン開幕後、好調な打撃を展開し続けた堂林。守備面ではかつての定位置であるサードでのスタメンも増加した。複数ポジションを守れる堂林は、攻守においてチームになくてはならない存在となっていた。

「堂林に期待したいのは、とにかく打つこと。塁に出ることも含めて四球を選ぶこと。そういうことを求めるなかで、安定した数字を残せば上位を打ってもらいたいですが、まだそこまでの実績もないのが実情です。なので、とにかく1年間、下位打線の中で恐い存在になってほしいと思っています」(朝山コーチ)

 毎年のように悔しさを味わってきた中で、ようやくつかんだチャンス。堂林はそれを逃すまいと、目の前の試合に全力で挑み続けた。

「1年間、一軍の戦力としてあり続けること。一日一日が勝負だと思って戦い抜きたいと思います」

 プロ11年目で復活劇を見せつつある堂林を見て、新井はこう話した。

「いま楽しいでしょうね。彼は僕のアドバイスも良かったと言ってくれているようですが、あくまでがんばっているのは本人ですから。それが報われているんでしょう」
(#7に続く)