ついに大野寮に入寮し、プロ野球選手としてのスタートを切ったカープの新入団選手たち。ここでは、現在主力として活躍する選手たちの、若かりし入寮時の秘蔵カットを紹介。今回は1年目から大車輪の活躍を見せ新人王に輝いた、2019年ドラフト1位・森下暢仁をピックアップする。

持参した松井秀喜氏(元ヤンキースなど)にまつわる書籍を手にする森下暢仁。

◆球界を代表する選手への第一歩

 今から約1年前の2020年1月7日。期待のドラ1ルーキー森下暢仁をはじめとする、全9名の選手が大野寮に入寮した。

 “大学球界No.1右腕”との触れ込みで、その入寮も大きな注目を集めた森下は、入寮前に“断捨離”を行ったこともあり、大野寮に届けた段ボールは一つだけ。野球をする上で最低限と言っても良い荷物の中で、特徴的だったのはメジャーリーグでも活躍した松井秀喜氏にまつわる一冊の本。

「普段はあまり読書をしないんですが、これだけは読もうと思っています。林監督が僕に何かを伝えたいということだと思います」

 大分・大東中野球部の顧問である林氏から手渡された書籍は、伊集院静氏が、松井秀喜氏の生き様を記したもの。野手と投手の違いこそあれど、プロ野球界の大先輩の書籍と共にプロ野球人生をスタートさせることとなった。

 入寮当日は「地道にゆっくり、自分らしくやっていきたい」と語っていた森下だったが、翌日の新人合同自主トレでは、ドラフト2位の宇草孔基と共にランニングで先頭をキープ。

 キャッチボールを見た高信二一軍ヘッドコーチ(当時)は「キャッチボールを見ただけだけど、球にスピンが効いている。フォームにしなやかさがあるよね」と高い評価を下した。

 新型コロナウイルスの流行により、開幕延期となった2020年シーズン。誰もが経験したことのない、異例ずくめのシーズンとなったが、そんな中でも森下は開幕からフル回転。18試合に先発し、1完封を含む2完投で10勝3敗、防御率1.91と、文句のつけようがない成績を残した。

 チームトップとなる勝ち星を記録したものの、カープの背番号18を背負う右腕の進化はまだまだ止まらない。松井秀喜氏のように球界を代表する名選手への歩みは、まだ始まったばかりだ。