2月1日から始まる春季キャンプを前に、各選手が急ピッチで調整を続けている。選手はどのような思い、意図を持ってトレーニングに励んでいるのか。カープOBの大野豊氏が、自身の現役時代のエピソードも交えながら、自主トレ期間の過ごし方を解説する。

今季は鈴木誠也選手らとの自主トレで始動した森下暢仁投手。今年も先発ローテの軸として期待されている。

◆目を引いた森下の調整法。野手のみの自主トレに参加

 2月1日から始まる春季キャンプが目前に迫ってきました。今と昔ではオフの調整法もだいぶ違うと思いますが、近年は若手、ベテランに関わらずオフの間も体を動かし続けている選手が多い印象があります。

 確かにオフの間も10とは言わないまでも、5とか7まで体力を維持しておけば年明けの合同自主トレにもスムーズに入っていけます。我々の現役時代は、オフは体のケアに努めて1月5日ごろから始動。そこから湯布院に行くという流れでした。最初のころは全選手が参加して、寒いなか小学校を目指して何もない田んぼ道を走っていました。学校ではキャッチボールをしたり温水ではないプールで泳いだりと、マシーンを使うのではなく基礎的な運動が中心でした。

 ただ素晴らしい温泉はあるのですが設備面が整っていなかったこともあり次第に野手が抜け始めて、そして投手も環境が良い場所で自主トレを行なうようになりました。それで最後に残ったのが私と清川栄治。秋はまだ続いていますけど、1月の湯布院は私が引退する1998年で最後となりました。

 今年の自主トレで目を引いたのは、森下が鈴木を中心とする野手の合同自主トレに参加したことですね。メンバーに投手が一人もいないというのは非常に珍しいケースです。ただシーズン中は野手と練習する機会はそれほどないので、森下にとっては貴重な経験になったと思います。というのも「打者が普段どんなことを考えて打席に立っているのか」など、いろいろなことを聞けるわけですからね。

 私自身、現役時代は自分から野手に質問して、打者目線の考え方を聞いていました。その中で『野手はそういうふうに考えてバッターボックスに入っているのか』と気づかされることも多々ありました。良かれと思ってやっていたことが「もう少しこうした方がいいよ」と言われることもありましたし、投球する上で非常に役立った記憶があります。

 あと野手が一番嫌なのは、やはり四球みたいですね(苦笑)。ストライクが入らない、投球のテンポが悪い。そういったことを、よく髙橋慶彦が指摘していました。では、そうしないようにするには、どうしたら良いのか。野手と会話をかわすことで、いろいろと考えた記憶があります。

 1年目に活躍したからといって2年目も結果を残せるという保証はないわけですから、森下もいろいろ考えた上で参加を志願したのでしょう。先発陣の頭数は揃いつつあるとはいえ、大瀬良、野村も手術明けですし、そこは気になるところです。新人投手、新外国人投手のデキも含め、私個人の春季キャンプの注目ポイントはやはり投手陣になりますね。